我々はアビジンが結合している熱応答性磁性ナノ粒子(Thermoresponsive magnetic nanoparticle: TMNP)とCryptosporidium parvumに特異的なビオチン化モノクローナル抗体を用いてオーシスト回収用の熱応答性免疫磁性ナノ粒子(Thermoresponsive immunomagnetic nanoparticle: TIMNP)を開発した。また、クリプトスポリジウムのオーシストから核酸を抽出する界面活性剤抽出処理(Surfactant extraction treatment: SET)とTIMNPの併用法(TIMNP-SET法)を用いたオーシスト18S rDNAの検出に成功している。平成29年度は、TIMNP-SET法を用いて河川水からのC. paruvumオーシストの回収およびDNAの検出条件を検討した。オーシストDNAの検出には、クリプトスポリジウム18S rDNAに特異的なプライマーセットとTaqManプローブを用いた。TIMNPの粒子濃度は4 mg/mLに調整した。C. parvum DNAとTIMNPを含む試料水に陰イオン界面活性剤SDS(終濃度0.1%)を添加した後、加熱処理(90℃、15分間)で核酸を抽出し、加熱処理後のTIMNPがリアルタイムPCRに及ぼす影響を評価した。その結果、TIMNP濃度1%由来のPCR阻害はTween20添加では抑制されないが、SDS処理のみで抑制されることがわかった。また、蒸留水750 μL にオーシスト100000個を添加してクリプトスポリジウム汚染水を調製し、TIMNP-SET法を用いてオーシストの回収およびリアルタイムPCR法によるDNAの検出感度を評価した。その結果、PCR試薬中のTIMNP濃度が1%でもPCR阻害が抑制され、オーシスト由来DNAを高感度に検出できることが確認された。
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