干潟がヘドロ化して来た要因としては,有明海湾内の水質汚濁が原因である可能性が指摘されているが,下水道および合併浄化槽などの水質浄化施設の整備率が90%程度になっている現状から推察すると,水質汚濁によるヘドロ化は的外れである可能性が高いと考えられる.有明海に流れ込む多くの河川では1960~70年代には河川からの川砂採取,1975年以降のダム建設による堆砂によって,海への砂流出量が減少し、有明海沿岸域ではヘドロ化した泥混じり干潟が増加していると言われている.本申請研究では,干潟のヘドロ化によって二枚貝類が大きな影響を受け,その生息量が激減していると考え,ヘドロ浄化実証研究に着手した.また,砂防・ダム施設では,砂だけではなくその他の有機物などもトラップされていることが指摘されており,これにより沿岸域へのフルボ酸鉄の供給が減少していることも十分に考えられる.本申請研究では,従来,砂干潟であった箇所がヘドロ化する要因として,フルボ酸鉄の供給不足を主要因として考え,研究スキームを組み立て,この手法による浄化機構の定量化を目指して,研究を実施してきた. その結果,この資材を用いることによって研究計画に記載している内容を実証することがほぼ達成され,今後の干潟浄化に関して有益な基礎情報を収集することが出来たと考えられる.問題点としては,この手法をより大きな実証地において施工した場合に,本申請研究と同等の効果が期待できるかどうかを確認する必要性が挙げられる.この点に関しては,今後も継続して研究を行っていく予定である.また,この資材を用いることで干潟表面部分で現れる効果に関しても今回の分析によってかなり明らかになってきた.
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