研究課題/領域番号 |
16K06558
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
立藤 綾子 (田中綾子) 福岡大学, 工学部, 教授 (10131830)
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研究分担者 |
平田 修 福岡大学, 環境保全センター, 助教 (00461509)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 焼却灰の土壌還元化 / 細菌の生残率 / 生ごみ堆肥覆土材 / 細菌群集解析 / Biokog基質利用性 / 16SrDNA解析 |
研究実績の概要 |
焼却灰の土壌還元化促進のために生ごみ堆肥を覆土材に用いて3年放置した焼却灰試料について、16SrDNA解析による細菌群集解析及びBiolog試験による基質利用性について調査し、覆土材に真砂土を用いた場合と比較した。その結果、真砂土を覆土材に用いた場合、Lysobactor yangpyeongensisやHydrogenphaga taeniospiralis等の火山灰や温泉・熱水孔等の極限環境に生息する細菌群が主体であるのに対して、生ごみ堆肥を用いた場合、Salinicoccus carnicancriやDehalogenimonas alkaerigignens 等の好塩菌や脱塩菌を主体とする細菌群で、生菌数は真砂土の1000倍であった。これらのことから、覆土材に生ごみ堆肥を適用することによって焼却灰中に耐性菌を中心とした微生物群が集積され、それらによって土壌還元化が進行することがわかった。また、生ごみ堆肥を適用した場合、焼却灰の生菌数は一般土壌と同程度であったが、基質利用性は一般土壌の1/1000以下と低いことから、細菌群集の活性が低いことが分かった。このことから、細菌群集の解析に加えて、基質利用性試験を行うことによって、焼却灰の土壌還元化の進行度を評価することが可能であることがわかった。 さらに、焼却灰に堆肥溶出液を混合後に堆肥溶出液中の生菌及び芽胞の生残率を測定した場合、生菌ではpH10以上、芽胞ではpH11以上において生残率が低下した。一方、土壌溶出液の場合、生菌及び芽胞共にpHに関係なく、生残率は1/10以下で、堆肥溶出液の場合に比べて化学性状で評価できない影響が見られた。これらのことから、焼却灰の土壌還元化を評価する生物指標として細菌の生残性試験は有用であり、生残性試験の種菌として用いる細菌群集を選択することによって、その進行度を評価できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していなかった実最終処分場の焼却灰(埋立直後及び1年経過後)及び生ごみ堆肥と焼却灰が混合埋立され、約30年経過した焼却灰混合廃棄物を採取でき、その化学性状調査及び生菌数試験から、焼却灰の洗浄や二酸化炭素吹込みなどによって模擬的に土壌還元状態を再現した試料よりも、さらに土壌還元が進行した試料であることがわかった。これらを用いることによって、筆者らが提案している生物指標の有効性の裏付けが取れる可能性が高い。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に焼却灰の破砕処理が実施できたので、平成29年度は予定通り、1年経過時点における焼却灰の調査を実施し、破砕処理による生物の生育阻害物質であるアルカリ塩類の洗い出しの促進効果が持続できるか評価する。 また、平成28年度に採取した30年経過後の焼却灰混合物について細菌の生残性試験を実施し、土壌還元化の生物学的評価指標としての生残性試験の有用性を確認するとともに、その試験に有用な種菌についても明らかにする。
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