研究実績の概要 |
本研究では、次世代シーケンサーによる生理的活性のある細菌の細菌叢解析のため、rRNAそのものを使用したRT-qPCR(逆転写qPCR)法とろ過濃縮したサンプルのPMA処理方法を確立し、アンプリコンシーケンス解析においてPCR, PMA-PCR,RT-PCRを比較した。先ず2段階で増幅を行うnested-PCR法の効果について検討するため、熱処理した排水サンプルに培養した大腸菌と糞便性連鎖球菌を添加して3つのPCR法とPMA-nestedPCRで細菌叢を解析したところ、16S rRNA遺伝子のV3-V4領域でのアンプリコンシーケンス解析では、RT-PCRのみほぼ添加量を反映した細菌叢が得られた。nested PCRとPCR法による違いはほとんどなく、これらの結果はβ多様性解析によっても確認できた。 次に生活排水、その処理水、河川水と消化汚泥にPCR, PMA-PCR,RT-PCRの3手法を適用して細菌叢解析を行った。生活排水と河川水ではPCRとPMA-PCRを適用したサンプルの細菌叢が類似していたが、RT-PCRを用いた場合細菌叢は異なる傾向を示した。処理水と消化汚泥では3つの手法で明らかな違いが認められた。さらに4つのサンプルとも手法によってβ多様性が大きく異なり、分析手法によって活性のある細菌叢に顕著な違いがあることが知られた。2つの下水処理場の処理工程3地点に3つのPCR法を適用し、アンプリコンシーケンス解析で病原性細菌の挙動解析を行った。2つの処理場ともRT-PCR法で得られた細菌叢のみ他の2方法と異なっていた。またMycobacterium属の細菌が最終沈殿池流出水と処理水のPMA-PCR法とRT-PCR法で得られた細菌叢で組成割合が高く、塩素消毒後も活性を維持して残存していることが分かった。
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