2011年東北地方太平洋沖地震では、傾斜した支持層に建つ杭基礎建物において地盤特性や基礎構造の特徴に起因すると思われる地震被害が見られた。本研究課題では、被災建物の調査や観測データに基づいて、杭支持層の傾斜が杭頭部の地震時応力に与える影響および杭の耐震設計への応用について検討した。2次元有限要素法により数値解析モデルを作成し、本震の地震記録を用いた非線形地震応答解析を実施して、本震時の建物挙動および杭頭部の地震時応力を検討した。杭支持層の傾斜により、階段棟の杭頭部では降伏曲げモーメントに達し、塑性率で2.8となり、本震時の被害状況をある程度説明することができた。一方、杭支持層の傾斜により長い杭と短い杭でモデル化された建物では、短い杭の杭頭部で降伏曲げモーメントに達した。この解析ケースでは塑性率が2.6と実際の被害状況に比べると大きな応答を示す結果となった。 次に、杭支持層の傾斜角が杭頭部の地震時応力に与える影響をパラメータスタディにより検討した。杭頭の損傷がないあるいは小さい場合には、杭支持層の傾斜角が大きくなるほど短い杭の杭頭部に地震時応力が集中する結果となったが、杭頭部の損傷が進むにつれて、応力の再配分が起こり、短い杭と長い杭の応力差が小さくなる結果となった。 最終年度では上記の結果について、杭支持層の傾斜角と杭頭部の地震時応力の関係として耐震設計に応用できるように影響係数として整理したほか、上部構造を骨組モデルとすることで、上部構造のロッキング振動が杭頭部の曲げモーメントに与える影響について検討した。杭支持層の傾斜角が大きくなることにより、ロッキング振動が励起され、杭頭部の地震時応力が大きくなる傾向を指摘した。 最後に、不整形地盤である山形盆地において杭基礎建物の常時微動観測を行い、地盤‐杭‐建物の動的相互作用について検討を行い、本研究課題の成果の拡張をはかった。
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