平成29年度に円柱供試体レベルで製作できることを確認した圧縮強度28~11N/mm2までの低強度コンクリートを製作した。圧縮強度28N/mm2および11N/mm2を選び、一面せん断試験結果が不足していたD10とD13のあと施工アンカーの一面せん断試験を実施した。一面せん断試験実施後のコンクリート塊を含め、圧縮強度28~11N/mm2のコンクリート塊にD10~D19のあと施工アンカーを施工し、試作せん断試験装置によるせん断試験を実施して一面せん断試験結果と相互に比較することにより、試作せん断試験装置の動作特性を把握した。特に、試作せん断試験装置をコンクリート面からアンカー筋径に応じて1~8mm浮かせて試験を実施することにより、一面せん断試験結果とよく対応する結果が得られることを確認した。なお、あと施工アンカーの施工では、平成29年度に製作した穿孔冶具および試験アンカー筋保持冶具を使用したが、試験結果のばらつきが少なくなることを確認した。 一面せん断試験では耐震補強外付け工法を想定し、載荷水平力があと施工アンカーと既存フレームに対応する棒材に分かれて作用する実験とした。試作せん断試験装置を使用してあと施工アンカーの伝達せん断力・変形関係を予め知ることができれば、コンクリート強度に応じて既存フレーム相当部分とあと施工アンカーを介する補強部分との変形を考慮した水平力分担率を求めることができ、合理的な耐震補強設計につながることを確認した。 試作せん断試験装置が耐震補強設計の精度と信頼性向上、施工品質管理、実験室における研究目的の試験等に有用であることを情報発信するために、日本建築学会大会にて論文発表を行い、さらに科学技術振興機構東京本部にて開催された福井大学新技術説明会で開発技術の発表を行った。また、テキサス大学オースチン校にてセミナーを開催し、国外へ向けても情報発信した。
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