本研究では,① 空間構造を構成する主構造材の限界変形に注目した新たな安全性能評価法を示すとともに,② 空間構造を構成する非構造材(天井材を含む)の安全性能評価法を示し,③適切な雪荷重や地震荷重が作用した場合を想定し,④ 空間構造の雪や地震に対する機能維持性能を含む総合的な安全性能評価方法を提案することを目的とする。 (1) 雪荷重を考慮した場合の耐震性能評価の一例として,小規模学校体育館を想定した単層円筒ラチスシェル屋根に対して雪荷重や積載荷重を考慮した断面算定を行い,解析対象を設定した。(2) 下部構造を有する単層円筒ラチスシェルに対して部材の降伏や座屈を考慮した時刻歴弾塑性地震応答解析を実施し,当該構造物の地震応答性状を分析するとともに、断面算定に用いる設計用の雪荷重の大きさが当該構造物の耐震性能に与える影響を明らかにすることができた。一般に、設計用の雪荷重が大きくなる場合、対象構造の固定荷重に対する終局耐力が3から4倍程度になり、下部構造を有する単層円筒ラチスシェルは、安全限界相当の地震入力に対して安全であることを明らかにした。(3) 地震応答性状の分析より,当該構造物の終局状態は下部構造の最大変形によって概ね定められることを明らかにし,等価線形化手法を用いた下部構造の最大変形の簡易推定法を提案した。この手法を用いた当該構造物の耐震性能評価方法を新たに提案した。さらに、円筒ラチス以外の空間構造である下部構造に支持された自由曲面ラチスシェルに対して提案した方法を適用し、耐震性能評価方法を新たに提案した。
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