研究課題/領域番号 |
16K06574
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
多田 元英 大阪大学, 工学研究科, 教授 (90216979)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 筋違 / 曲げ座屈 / 引張破断 |
研究実績の概要 |
筋違付きラーメン構造の弾塑性地震応答性状を把握するために,筋違が圧縮を受けて曲げ座屈し,引張を受けて降伏する繰返し弾塑性挙動を数値解析で表現可能な一般化塑性ヒンジモデルを前年度までに整備したが,今年度はそれの適用範囲を広げるための検討を行った。すなわち,前年度に提案した回帰式に用いる諸係数値が筋違の細長比に関わらず一定になるとの知見を得るとともに,材料の応力度-歪度関係が,完全弾塑性形と歪硬化形のそれぞれに対して,適切な諸係数値を提案した。 軸力と2方向曲げを受けて局部座屈し耐力劣化する角形鋼管柱の一般化塑性ヒンジモデルによる解析プログラムについては,局部座屈による耐力劣化後の繰返し挙動についてFEMで考察し,その特徴を一般化塑性ヒンジモデルで表現可能な繰返し履歴則を提案した。さらに,H形鋼柱についても同様の一般化塑性ヒンジモデルを構築するために,まずはH形断面の近似降伏関数を定式化した。 局部座屈により耐力劣化するH形鋼梁については,従来の加藤・秋山による提案式を改良するべく,いくつかのケーススタディーをFEM解析で行い,その劣化挙動を表現可能な単調曲げモーメント-回転角関係を提案した。 現行の建築基準法に則って設計された3階建て筋違付きラーメン構造の完全倒壊に至る地震応答挙動については,柱梁の局部座屈による耐力低下,梁端フランジの破断,筋違の破断を考慮した地震応答解析を実施した。前年度までに考察したH形鋼筋違と平鋼筋違に加えて,本年度は円形鋼管筋違について設計し,倒壊に至る挙動を比較した。その結果,円形鋼管筋違の場合は繰返しの多い地震動で早期に破断に至って耐倒壊性能が小さくなることなどの知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋違が曲げ座屈し引張降伏する繰返し弾塑性挙動を解析可能な数値解析プログラム,角形鋼管柱が軸力と2方向曲げを受けて局部座屈することによる劣化挙動を解析可能な数値解析プログラムについては,より高精度なものに改良するための考察・作業が継続的かつ順調に進捗している。角形鋼管柱については一定のレベルまで達したことから,H形断面柱に対するプログラム作成に移行しつつある。また,局部座屈により耐力劣化するH形鋼梁の曲げモーメント-回転角関係の力学モデルの改良については,いくつかのケーススタディーにより改良方法の方向性が得られたため,本格的な改良検討に移行できる状態になっている。 以上より,おおむね順調に進捗しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
H形鋼梁が局部座屈して耐力劣化する挙動は,加藤・秋山による提案式を現在使用しているが,これは過度に急激な劣化挙動を示すことが一般に指摘されている。前年度に行ったケーススタディーにより改良のための方向性が得られたことから,H形鋼梁のシェル要素による有限要素解析を,幅厚比やシアスパンをパラメータとして広範囲に実施し,より実状に近い曲げモーメント-回転角関係を提示する。一方,筋違の繰返し弾塑性解析プログラム,および軸力と2方向曲げを受ける角形鋼管柱の弾塑性解析プログラムについては,前年度に引き続いて改良に取り組むとともに,軸力と2方向曲げを受けるH形鋼柱の弾塑性解析プログラムの開発に注力する。 建築基準法に則って設計した3階建て筋違い付きラーメン構造の完全倒壊に至る地震応答挙動の考察については,新たな筋違構造形式についても設計・検討を行い,より広範囲な検討を進める。
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