研究課題/領域番号 |
16K06576
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
菊池 健児 大分大学, 理工学部, 教授 (50117397)
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研究分担者 |
黒木 正幸 大分大学, 理工学部, 教授 (10295165)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 補強コンクリートブロック造 / メーソンリー / 耐力壁 / 耐震性能評価 / 耐震改修 / 直交壁 / 構造実態調査 |
研究実績の概要 |
わが国では,部分充填型のメーソンリー構造である補強コンクリートブロック造(以下,補強ブロック造)の低層建物が1960~70年代を中心として全国各地に多く建設されているが,この構造による既存建物の耐震性能を評価する方法は未だ確立されてない。そこで,本研究では補強ブロック造建物の耐震性能評価方法を検討するとともに,耐震改修に関する技術を開発することを目的とする。以下に,平成29年度に実施した研究の概要と成果を示す。 1.既存補強ブロック造建物の構造実態や劣化状況に関する現地調査を平成28年度に引き続き群馬県において行った。本年度の調査建物は,1955年に竣工した共同住宅で,圧縮強度が低い種類のコンクリートブロック(以下,ブロック)が用いられている。建物のブロック壁体から切り出した角柱試験体の圧縮試験を行った結果,当時のJISに規定されるブロック強度に対し約1.2倍の強度を有することが確認された。また,日本建築学会の小委員会で研究代表者と分担者が中心となって作成中の耐震性能評価法を用いて本建物の耐震性能を評価した。 2.補強ブロック造の耐震補強として耐力壁を増厚補強する方法を取り上げ,せん断破壊型の直交壁付き耐力壁試験体3体を作製し,ブロック壁体の外側に補強筋を配置しポリマーセメントモルタル(以下,PCM)により壁体を増厚補強し,水平加力実験を行った。その結果,初期剛性,最大耐力,最大耐力時の層間変形角に関して補強効果が確認された。また,PCM補強壁体の最大耐力は,ブロック壁体とPCM壁体のそれぞれのせん断終局強度またはすべり耐力を単純累加した計算値により概ね評価できた。 3.本研究の耐力壁試験体の実験結果を基に履歴ループについて検討した。その結果,履歴ループの性状は除荷時剛性低下指数を0.7程度としたTakedaモデルにより概ね近似でき,直交壁の有無による違いはあまり見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究実施計画どおり,補強ブロック造耐力壁を耐震補強法の補強効果検証実験を行い,本研究で提案しようとしているPCMを用いた耐力壁の増厚補強の有効性を明らかにした。また,既存補強ブロック造建物の構造実態や劣化状況に関する調査は,本年度も群馬県内において現地調査を実施でき,研究資料の充実が図れた。さらに,本構造耐力壁の耐震性能評価方法に関して耐力壁の履歴ループの性状の検討などを行い,研究を順調に進展させている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28~29年度は当初計画に即して順調に研究が進展して来ているので,最終年度も当初計画に沿って研究を推進することとし,既存補強ブロック造建物の耐震性能評価方法および耐震改修方法について検討・提案を行う。
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