研究実績の概要 |
1.開発している鉄筋集成材は,鉄筋により曲げ耐力が大きくなり,部材で発生するせん断応力も大きくなる。,鉄筋集成材におけるせん断強度と,曲げ降伏した以降,せん断破壊に転じる現象のメカニズムの解明と,設計のための限界変形の評価方法が必要になる。 木材のせん断強度に及ぼすせん断スパン長さの影響と,それに及ぼす繰り返し加力の影響を明らかにする試験を行った。これに関する成果のまとめは下記である。 (1)鉄筋集成材と同様に小径異形鉄筋で曲げ補強することにより,試験片をせん断破壊させて,せん断強度を把握することができた。(2)小型の鉄筋スギ集成材のせん断繰返し加力を行い,疲労特性を明らかにした。累積消費エネルギー量を基準化した疲労特性の評価方法を修正して,鉄筋集成材のせん断疲労破壊のS-N曲線を誘導し,繰返し疲労破壊の破壊回数を説明できた。 2.梁端が曲げ降伏する梁のヒンジの接合筋は引張強度まで抵抗するため、柱梁接合部ではせん断破壊や接合筋の定着破壊も生じやすい。梁端の曲げ耐力を抑制する方法を検証する梁の繰り返し曲げせん断加力実験を行った。これに関する成果のまとめは下記である。 (1)太径鉄筋(D13,SD390)と細径鉄筋(D10,SD345)を圧接して構成する接合鉄筋は,太径鉄筋の区間を柱梁接合部内に接着して,細径鉄筋の先端を梁集成材の内のC.F.スリーブに接合することにより,両者の間の細径鉄筋の区間に降伏領域を限定できた。これにより,接合鉄筋の定着破壊は実験の最終変形角(1/40rad.)まで生じなかった。(2)柱梁の境界において,梁端の下側半分に5mm幅の隙間を設けて,下端の接合鉄筋だけが圧縮降伏と引張降伏を繰り返す方法を検証した。梁の部材角で1/67rad.までは,上端の接合鉄筋が降伏することなく,下端筋が引張降伏と圧縮降伏を繰り返し,豊富なエネルギー吸収性能を発揮した。
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