研究実績の概要 |
鉄筋を集成材の内部に挿入して接着し、その曲げ剛性と曲げ強度を増大させる鉄筋集成材を用いる梁に関する研究である。接合鉄筋を用いて柱と接合し、梁端を曲げ降伏させる梁の弾塑性性状を加力実験により明らかにして、そのせん断力-変形関係の骨格曲線を評価する方法と、また、詳細な履歴ループを評価できる力学モデルを開発した。以下に成果をまとめる。梁端の下端主筋だけを圧縮と引張の繰り返し降伏させる梁の加力実験を行い、接合鉄筋の定着破壊を生じることなく,計画した降伏区間だけを降伏させて,優れた紡錘形のエネルギー性能を発揮した。また,1/50rad.までであれば4回の漸増繰り返し加力を受けても,損傷と履歴ループの劣化がほとんど生じず,極めて優れた耐震性能を発揮した。下端の接合鉄筋だけを降伏させる方が,降伏後の二次剛性をかなり大きくできる。下端の接合鉄筋だけを降伏させる梁では、その座屈が梁の限界変形を決定する。梁の残留変形の抑制については,下端の接合鉄筋だけを降伏させる梁の方が,上端と下端を降伏させる梁より,残留変形が抑制できる。梁の等価粘性定数は鉄筋コンクリート構造に用いる式で評価できた。梁のせん断力-変形角関係の骨格曲線の評価方法を開発して、梁スパン中央側の範囲では平面保持の仮定が成立し,計算値により曲げ剛性を推定できる。梁端のヒンジ区間のモーメント-回転角関係および梁全体のせん断力-変形角関係は,提案した方法により実験値の包絡線を精度よく評価できた。鉄筋コンクリート部材で用いられるマルチスプリング(MS)モデルは,梁端が曲げ降伏する鉄筋集成材にも適用でき、鉄筋集成材にはひび割れがほとんど生じないため,その適合度は極めてよい。鉄筋集成材構法における梁端のヒンジ区間における鉄筋と木の応力-ひずみ関係を,MSモデルのヒンジ区間で用いる鉄筋と木の応力-ひずみ関係に変換する変換式を示した。
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