研究課題/領域番号 |
16K06587
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
栗田 哲 東京理科大学, 工学部建築学科, 教授 (90195553)
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研究分担者 |
金 南昔 東京理科大学, 工学部建築学科, 助教 (80756966)
源栄 正人 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (90281708)
三辻 和弥 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (90292250)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | モード同定 / 部分構造法 / 損傷 / 部材 / 卓越振動数 / 動的相互作用 / FEM |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、構造解析学で構築された部分構造合成理論に基づいて、部材単体の振動モードと剛性を建物の微動データから効率的に同定する方法(FDD部分構造合成法)を提案すること、部材の損傷を検知する方法を提案することである。このために、①FDD部分構造合成法の提案、②FEM解析によるFDD部分構造合成法の検証、③振動台実験と微動測定によるFDD部分構造合成法の検証、④被災建物の全体振動モードと部分構造単体の振動モードの同定、⑤部分構造の損傷検出手法の提案と検証、⑥被災建物の損傷検出、を実施する計画である。 初年度では①、②、④に関して研究を行った。①に関しては、同定した部分構造の振動モードを合成する方法を展開し、微動測定データを使ってこの方法の問題点を検討した。合成が上手くできない場合もあったことから、合成法の改良が必要であった。②と④に関しては、はじめに、建物の微動測定データを使い全体振動モードを同定し、また、部材の振動モードなどの振動特性を調べた。地盤と建物の連成振動が振動モードに影響を与えていた建物が見つかり、提案法の精度向上には地盤と建物の連成振動の考慮が必要であった。部材の振動特性については、耐震壁側柱、柱、床組みについて調べた。同一形状の部材でも、配置された箇所(階、通り)の異なると高振動数側の卓越振動数に違いが見られ、また、損傷を受けると卓越振動数が低下することが認められたことから、高振動数領域での振動モードを使って損傷同定が可能と思われた。FEM解析によるFDD部分構造合成法の検証を行うために、東北大学人間環境系研究棟などの建物の3次元FEMモデル(柱と梁は3次元ビーム要素、壁と床スラブはシェル要素)を作成した。また、地盤と建物の連成振動を考慮するために、建物の立地している青葉山の3次元FEMモデル(平面:約3km×2km、高さ:120m)を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①FDD部分構造合成法の提案については、一つの手法を提案した。ただし、手法の改良を行う必要があり、地盤と建物との連成振動を考慮した合成法も提案することが重要と思われた。②FEM解析によるFDD部分構造合成法の検証はFEMモデルを作成した。今後は、合成法の提案と同時に手法の検証を行う。提案手法が十分な精度を有していない場合には、問題点を明らかにし、手法を改善できるようにしたい。③振動台実験と微動測定によるFDD部分構造合成法の検証は、2年度目から着手する。④被災建物の全体振動モードと部分構造単体の振動モードの同定は実施し、研究実績の概要に述べた通り、合成法の提案に有効な知見が得られた。2年目以降も継続的に検討を行う。⑤部分構造の損傷検出手法の提案と検証、⑥被災建物の損傷検出は2年度目から着手する。 以上のことを踏まえて、初年度の進捗状況は概ね予定通りと思わる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに研究を実施する。2年目は、③振動台実験と微動測定によるFDD部分構造合成法の検証を中心に研究を行う。①では手法の改善を試み、④被災建物の全体振動モードと部分構造単体の振動モードの同定は継続的に行い、⑤部分構造の損傷検出手法の提案と検証と⑥被災建物の損傷検出に着手したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究対象となっている、東日本大震災で被災した杭基礎建物の模型実験を実施して、これまでの観測記録や数値解析結果との比較・検討を行うことを考えていたが、実験計画の詳細の決定、計測機器の選定や実験冶具の用意などに予想以上に時間がかかってしまったため、実験の予定が大きくずれ込んだ。そのため、発注時期が年度末になったため、十分な時間的余裕を持って実験を行うことができないと判断されたため、今年度予算を次年度使用額として残すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
予定していた模型実験を行うための、計測機器、実験冶具、実験消耗品などに使用する計画である。また、得られた実験結果を整理したうえで、研究代表者との研究打合せのために東京理科大学を訪問する旅費に使用する予定である。
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