研究実績の概要 |
ネットワーク及び補修剤を用いた自己修復コンクリートの開発を行っており,これは,梁部材における下端主筋の下部にネットワークを設け,圧力を加えて補修剤を注入することによりひび割れが発生した際に補修剤がひび割れ内部に充填され,閉塞を行うものである。本研究では, ネットワークにシラン系含浸材を高圧で注入することにより,ネットワーク周辺に劣化因子の侵入を抑制する保護層を形成することによるコンクリートの耐久性の向上を目的としている。含浸材の浸透深さに影響を与える要因として①注入圧力②注入時間③コンクリートの空隙率④含浸材の粘性⑤注入後における養生温度⑥コンクリートの含水率等が挙げられる。そこで,これらをパラメータとした基礎的実験を行い,実構造物における最適な注入条件を明確にした。現段階においては,予備実験として,100×100mm の断面に対しφ10mm のネットワークを有する供試体に対し,高圧ポンプを用いたシラン系含浸材の注入を行っており,その結果10MPa の圧力で3 時間の注入を行うことにより45mm 程度の浸透深さを確認した。しかし,実構造物において,性能と時間,コストの関係から最適な注入条件を確定させるためには,実験データが不足していると言える。そこで,空気量の異なる100×100×400mm のコンクリート試験体(3%,4.5%,6%)に対し,圧力(1~10MPa)及び注入時間(1~5 時間)をパラメータとした実験を行い,浸透深さに及ぼす施工方法の影響ついて検討を行う。また,浸透性状はコンクリートの空隙組織に大きく影響を受けることが想定できるため,空隙率が及ぼす浸透深さに関する検討として,水銀ポロシメータを用い,含浸材の注入を行ったコンクリートの空隙率の測定を行った。さらに,電子線マイクロアナライザによる面分析を行い,微細構造をモデル化し浸透機構を明確化した。
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今後の研究の推進方策 |
梁モデル試験体による耐久性確認実験応募者がこれまで開発を行ってきた自己修復コンクリート及び含浸材の注入による耐久性向上について検討を行い,高耐久性及び自己修復性の有用性について検討を行う。ネットワークを有する梁モデル試験体を作製し,含浸材の注入を行う,その後,曲げ試験によりひび割れを発生させ,自己修復によりひび割れを閉塞させる。次に,第二載荷により,再びひび割れの自己修復を行い,強度回復を確認する。その後,中性化及び塩害による促進劣化試験を行い,コンクリート表面及びひび割れからの劣化因子の侵入抑制効果について検討を行う。
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次年度使用額の使用計画 |
試験体(消耗品):これまでに実施した実験における試験体作成費用の実績をもとに試算。各コンクリート原材料費,材料輸送費,型枠作製費用を含めて試算。コンクリート内部にネットワークを作製するために特集なチューブを使用する必要がある。更に,注入する塗布含浸材や防錆剤,再アルカリ化剤,ポリマー溶液及びエポキシ樹脂は高価である。実験補助人件費(人件費・謝金):実験実施時に,特集な機会を扱うため実験補助員として,職人及び学生アルバイトを雇用するために計上。研究成果発表及び実験を進めるために国内及び国外に出張する。 研究打合せ(国内旅費):定期的打合せを東京で機械及びメーカーと行い,実験実施時に郡山に研究協力者来校もしくは東京に行くために旅費を計上。研究発表(外国旅費):研究成果をコンクリート構造の耐久性,自己修復材料関連の国際会議で発表するため旅費を計上。
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