研究課題/領域番号 |
16K06595
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
東 康二 崇城大学, 工学部, 教授 (80320414)
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研究分担者 |
岩下 勉 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (10332090)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脆性破壊 / 延性き裂 / 溶接欠陥 / 破壊靭性 / 塑性拘束 / 機械切欠き / 有限要素解析 / 破壊評価 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は,溶接接合部における脆性破壊を予測するための欠陥の評価基準の策定である.これまで,柱梁接合部を単純化した試験体を用いて,欠陥から進展した延性き裂を起因とする脆性破壊の再現実験を行うと共に,塑性拘束の影響を考慮した2つの破壊評価方法(亀裂先端の破壊駆動力と応力・歪状態から塑性拘束を考慮するToughness Scaling Model(TSM)の手法,および確率論を包含したWeibull応力を用いて塑性拘束を考慮する手法)を提案し,その有効性を検証してきた.その結果,先端が鋭敏なき裂に対しては,的確に予測できるが,先端が鈍化したき裂に対しては,評価がばらつくことが明らかとなっていた.昨年度の繰返し載荷実験において,切欠き先端が鈍化した場合でも全ての試験体で脆性破壊が生じ,切欠き寸法と変形能力の相関,およびき裂の鋭敏性,破壊駆動力と延性き裂進展量との相関が確認できたが,破断面のミクロ組織観察による検討から,一部の試験体の脆性破壊は,一般のH形梁端接合部のスカラップ底に相当する位置を起点としていることが明らかとなった.そこで,本年度はスカラップ底に存在する切欠きからの破壊に着目し,スカラップ底が特異点となる試験体を4体製作し繰返し実験を行うと共に,有限要素解析によりスカラップ底に内包される様々な欠陥をモデル化し,この手法の適用性を検証した.なお,現場溶接形式とするため,梁端の開先は内開先とした.その結果,接合部試験体の終局耐力の予測では,精度よく予測が可能であることを示した.またこの手法を応用し,スカラップ形状の改良により,破壊時期を遅らせることが可能であることを解析的に示し,実験にてその改良が変形性能を飛躍的に向上させることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Weibull応力を用いるためのパラメータの特定を主目標として破壊靭性試験を実施する予定であったが,靱性試験と平行して,スカラップ底を起点とする破壊実験を実施し,その破壊予測を先行させたため,靱性試験は完了していない.そこで,上記の区分とした.
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今後の研究の推進方策 |
Weibull応力を用いるためのパラメータの特定を主目標として破壊靭性試験(三点曲げ試験)を完了させると共に,材料の形状パラメータを特定した後,材料試験とFE解析から得られた延性き裂発生点およびJc値の妥当性を検証する.既に実施したモデル化試験体の破壊予測を行い,その実験結果に基づき予測精度を検証する. また,本研究で提案した手法を応用することにより,まだ解明されていないスカラップ底からの破壊についても,その形状を検証することができ,実構造物の破壊予測が可能となると考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)引張試験片製作および実験にかかる消耗品の費用に端数が生じたため.
(使用計画)引張試験片および破壊靱性試験片の製作費に補填する.
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