研究課題/領域番号 |
16K06597
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研究機関 | 日本大学短期大学部 |
研究代表者 |
酒句 教明 日本大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (00435273)
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研究分担者 |
安達 俊夫 日本大学, 理工学部, 教授 (40130413) [辞退]
平出 務 国立研究開発法人建築研究所, 構造研究グループ, 主任研究員 (40370704)
下村 修一 日本大学, 生産工学部, 講師 (50443726)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スウェーデン式サウンディング試験 / 土質分類 / 液状化 / 摩擦音 / 電気比抵抗 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,実務で宅地地盤調査の大半に用いられるスウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)のデータから直接液状化強度の評価ができる予測法の確立を目的としている。具体的には(1)SWS試験から土質分類を推定すること(2)SWS試験のNsw値から液状化強度を推定することの二つが狙いである。 昨年度の研究実績は下記の通りである。 (1)SWS試験から土質分類を推定することについては,一昨年度までに安価で高性能なMEMSマイクによる土質分類の性能を確認した。今年度は引き続き,実務を意識した全自動SWS試験機対応に着手した。現在までに先端へのマイクの設置,ロッドのつなぎと信号の送り方,データ解析方法などを詳細に検討して測定システムを構築した。本測定システムの特徴は,従来のSWS試験に摩擦音のサンプリング機能を加えても多大な手間は必要とせず土質分類が可能になる。また,従来の解析処理プログラムの煩雑であった部分を整理した。 (2)SWS試験のNsw値から液状化強度を推定することについては,細粒分を含む砂の液状化強度とNswの関係について求めた。実験ケースを多く増やす必要があったため,従来の加圧土槽に比べ規模を縮小した加圧土槽を作製して実験を行った。細粒分を含む砂の検討では,既往の研究に検討例が少なく,繰返し三軸試験のために使用する試料を土槽からサンプリングして凍結するなど工夫を加えたが,取扱いが難しく得られた結果の精度については検証中である。昨年度から摩擦音を利用する方法以外に電気比抵抗を利用する方法についても検討した。本方法については以前から室内の検証が進められており,室内試験結果とフィールド試験結果の整合性を確認することが課題であった。昨年度は,その整合性を確認し,実務で使用するレベルでは特に大きな問題がないことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の進捗状況はおおむね順調である。その理由として,一つは当初の計画であった(1)スウェーデン式サウンディング試験により土質分類を可能にするための測定システムが開発できたことが挙げられる。全自動SWS試験に組入れた本測定システムにより,実務で要求される調査行為の速さ,調査のしやすさ,調査結果の精度が経験に依存しないなどを満足することができる。二つ目は一昨年度の引き続き(2)スウェーデン式サウンディング試験により直接液状化強度の評価が可能であるデータを示すことができたからである。 ただし,(1)については,試験機の開発が当初の予定よりも少々遅れたため,室内の検討内容の一部を今年度に先送りした(2)については細粒分を含む砂のサンプリングが難しく,得られた液状化強度の精度について疑問が残ったため,サンプリング方法に工夫を加える必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
一昨年度,昨年度の研究成果と進捗状況を踏まえて,今年度の研究計画は以下の通りである。 (1)スウェーデン式サウンディング試験により土質分類を可能にすることについては,順調に測定システム(全自動化SWS試験機対応)が開発できたため,まずは本測定システムの性能を室内模型地盤を使って確認する。具体的には,直径40cm,高さ30cmの塩ビ管に様々な模型地盤を作製し従来の測定システム(手回しSWS試験機対応)で得られた摩擦音と土質の関係と相違がないか再確認する。次に,フィールド調査への適用性を確認するため,あらかじめ既知の地盤を対象に測定を実施する。この時,昨年度から検討を始めた電気的比抵抗の原理を利用したSWS試験についても同時に調査を実施,両方の測定精度を確認して性能の評価を行う。 (2)スウェーデン式サウンディング試験により直接液状化強度を評価することについては,昨年度に引き続き液状化強度の及ぼす細粒分の影響について検討する。具体的には,まず直径30cm,高さ70cmの加圧土槽(ステンレス製)を用いて細粒分を含む砂の模型地盤に対して,複数の上載圧によりNswと地盤密度の関係を求める。次に,加圧土槽から乱さない供試体をサンプリングして三軸試験により液状化強度を求める。この時,昨年度はサンプリング方法に難点があったため今年度はサンプリング後の供試体の保管方法に工夫を加える。最後に,両試験結果を突き合わせることにより,昨年度まで検討していたNswと地震で発生した地中せん断応力比の関係および実際の液状化被害の関係から,細粒分を含む砂の液状化強度について定量的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは,共同研究者の下村修一が担当する加圧土槽せん断試験において,土槽側面に利用するゴムメンブレンを追加購入していないためである。具体的には,加圧土槽実験を遂行していたところ三軸試験用試料のサンプリング方法に問題が発生した可能性が挙げられたため,実験を途中で中止した。ゴムメンブレン自体は試用せず時間が経過すると劣化して使用不能になることが考えられたため,購入を中止した。来年度は引き続き加圧土槽実験を遂行する予定となっているため,再度ゴムメンブレンの購入に充てる予定である。
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