研究課題/領域番号 |
16K06607
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
秋月 有紀 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (00378928)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 分光特性 / 皮膚色 / ショック状態 / 循環不全 / LED / 色識別 / 色差 / 人種 |
研究実績の概要 |
本研究は災害医療視環境の改善を目的として、皮膚色から傷病状態を判別しうる光源の開発を目指している。初年度(H28)は、①日本人の循環不全皮膚色の色票プロトタイプの作成、②日本人と皮膚色が異なる人種(白人や黒人)の循環不全皮膚色の分光反射率データの収集、③日本人の皮膚色において循環不全状態を容易に判別しうる光源の分光分布の特定、の3つのサブテーマ(ST)について検討した。 ST①日本人の循環不全皮膚色の色票プロトタイプ作成において、紙製色票では目的の分光反射率を再現できないことを確認した上で、二企業(人工皮膚メーカーおよび光学機器メーカー)との産学連携共同開発を実施した。メーカーが所有する技術や材料を用いて試作を繰り返し、既往研究で得られていた日本人を被験者とした循環不全を含む三種(健康状態・ショック状態・鬱血状態)の皮膚色の分光反射率に近似する、ウレタン製の皮膚サンプルを作成した。 ST②日本人と皮膚色が異なる人種の循環不全皮膚色の分光反射率データの収集において、当初の研究計画では共同研究を行っている米国National Institute of Standards and Technology (NIST)にて、人種の異なる被験者を対象とした擬似的循環不全の皮膚色計測を実施する予定であったが、倫理審査により実施できなくなり、急遽計画を変更して富山大学で実施することとなった。 ST③日本人の皮膚色において循環不全状態を容易に判別しうる光源の分光分布の特定において、解析ツールNIST Color Quality Scale ver.9.0.1を用いて、傷病状態の異なる皮膚色の色差が最大となるLED光源の分光波形を抽出した。更にNIST Spectrally Tunable Lighting Facilityを用いて、皮膚サンプルや室空間の視認性について定性的に検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブテーマST①日本人の循環不全皮膚色の色票プロトタイプ作成は、傷病状態の皮膚色の分光反射率に近似した皮膚サンプルを作成できており、概ね目標を達成した。 ST②日本人と皮膚色が異なる人種の循環不全皮膚色の分光反射率データの収集は、当初の計画を変更して、研究実施場所を富山大学とすることになったので、現在、富山大学にて倫理審査手続きを行っているところである。本研究で人種の異なる皮膚色の大量データ収集を自力で行うことは困難になったが、国際照明委員会CIEの技術委員会TC-1-92 Skin Colour Databaseの主査Dr. Kaida Xiao (GB)と意見交換を行った結果、委員会では既に大量のデータを収集していることが分かり、本研究で必要な様々な人種の健康状態の皮膚色については、この委員会資料を参照可能であることを確認した。 ST③日本人の皮膚色において循環不全状態を容易に判別しうる光源の分光分布の特定は、Dr. Yoshi Ohno (USA)と共同研究を行い、NIST所有の実験装置NIST Spectrally Tunable Lighting Facility (STLF)・計測機器・解析ツールNIST Color Quality Scale ver.9.0.1 (CQS)を利用することが出来たため、効率よく目標を達成した。それに加えて、次年度実施予定であった視認実験の予備検討を実施することが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度のサブテーマST②において、研究実施場所を富山大学に変更したので、人種毎の十分な被験者確保が困難となった(特に日本人と皮膚色が大きく異なる白人や黒人の被験者確保が難しい)。今後は、富山大学在学留学生を対象として被験者を確保し、得られた結果で定性的な解析を行う予定である。 またST①では、皮膚サンプルの開発を引き続き実施し、日本人の循環不全皮膚色の分光反射率と同等レベルまで高める。 さらに申請時当初の研究実施計画に沿って、平成29年度は以下の3つのサブテーマについて取り組む。 ST④日本人の循環不全状態を容易に判別しうる分光特性を持つ光源を用いて、皮膚サンプルの識別性、照明空間の色の見えの自然さ・視認性・許容度等について被験者実験を実施する。実験環境はNISTのSTLFを主に利用するが、被験者確保の観点から富山大学でも実施できるかどうか検討する。 ST⑤日本人と異なる皮膚色において循環不全状態を容易に判別しうる光源の分光分布の特定、及びST⑥日本人と異なる循環不全皮膚色の色票プロトタイプの作成を実施する。但しこれらは、ST②(富山大学での実施)によりデータ収集を得た後に行う。
|