本研究では、都市近郊に多数賦存する農業用のため池や調整池、貯水池の水(貯留水)をヒートポンプシステムの熱源として活用することを提案し、本年度はこれまでに行ったCFD解析や実験結果に基づき、運転や停止による熱源温度の変動を簡便かつ高精度に計算するモデル(マクロモデル)を構築した。深さ5m以上の貯留水では夏季に温度成層ができ、底部においてヒートポンプの利用に適した低温の熱源水が得られることがわかっている。マクロモデルでは、温度成層下において底部からヒートポンプの排熱を放出する際の自然対流の挙動をCFD解析により算出し、水中に生じる受熱量分布をあらかじめ求めることで短時間での年間計算を可能にした。熱源温度の計算に必要なパラメータである混合層厚さと放熱器直上の受熱量は成層強度から推定した。実測および実験値と比較したところ、放熱時、非放熱時のいずれにおいても、マクロモデルの計算結果に妥当性が認められた。続いて、マクロモデルを用いて放熱量や放熱密度を変更したときの熱源温度についてケーススタディを行った。その結果、貯留水容量1m3当り30W以下程度の放熱量であれば、熱源利用による温度上昇は最高でも1℃程度にとどまり、高効率運転が可能なだけでなく、自然環境への影響も小さいことがわかった。仮に1万m2の貯留水の1/4を熱源として利用することを想定すると、約400kWのピーク負荷を賄えると予想された。
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