研究課題/領域番号 |
16K06611
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
穴井 謙 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (10325467)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 吸音材 / 微細穿孔板 / 保育器 / NICU / 周産期医療 |
研究実績の概要 |
本研究では,与えられた年限(3年間)で次の3つの課題に取り組んでいる。(1)保育器内の音環境の目標設定,(2)微細穿孔板(MPP)の形状・仕様決定,(3)音環境を向上させた保育器の提案,である。 初年度の平成28年度は,主として課題(1)と(2)に取り組んだ。課題(1)では,保育器のようにNICUで使用される閉じられた小空間の音環境の特異性に着目した。一般の新生児が寝かせられる上面が開放されたコットに比べて,四方が閉じられた保育器では音圧レベルがどの程度上昇するのか模擬空間で実験的に検討した。その結果,O.A.で5 dB程度のレベル上昇を確認することができた。四方を閉じられることにより,寸法から決定される固有周波数に合致する音のレベルが上昇すると考えられる。そこで,保育器内のインパルス応答を計測したところ,大きな音圧レベルになる周波数は300 Hzから1.5 kHz の中高音域(2オクターブ)に分布していることが明らかになった。 課題(2)では,課題(1)で明らかにした2オクターブの対象周波数に吸音効果を発揮するMPPの形状・仕様を検討した。まず,平面形状のMPPを用いることにして,Maaの理論式で性能評価を行いながら複数仕様で最適な組み合わせを求めた。清拭できることが実用上必要であると考え,厚さt=1.0 mmの2種類のMPPの仕様を選定した。保育器の模擬器で実験的に検証し,およそ3 dB以上の吸音効果が得られることを確認した。さらに,形状を平面から変化させる(例えばカーブさせる等)ことにより性能向上を図る検討に着手した。課題(2)の研究成果は,日本建築学会ならびに日本騒音制御工学会で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の平成28年度は,課題(1)保育器内の音環境の目標設定,課題(2)微細穿孔板(MPP)の形状・仕様決定に取り組んでいる。いずれも一定の成果を挙げていると考えている。 引き続き,課題(1)および(2)を推進しつつ,課題(3)音環境を向上させた保育器の提案を目指して研究を進捗させる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の平成28年度は,研究手段として実物大の模擬器を使用した実験的検討を行った。MPPの吸音効果を検討・実証するためには,このような検討が不可欠であった。その一方で,さらに細やかに仕様を詰めていく段階では,数値シミュレーションによる音場の可視化が有効であると考えている。 そのため,2年度目以降の本研究の推進にあたっては,実部大実験と数値シミュレーションを併用した取り組みを実施する予定である。
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