研究課題/領域番号 |
16K06614
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
二宮 秀與 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (90189340)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日射熱取得率 / 窓付属物 / 試験法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、窓に付属するカーテン・スクリーン類の熱的な性能を体系的に整理することである。窓の日射熱取得性能は、窓単体に対する評価方法は確立されているが、カーテン類のようにヒダや網目のある付属物については、現象を精度よく再現するモデルは未整備であり、実用的な評価方法は確立されていない。特に斜め入射日射に対する日射熱取得率の測定が課題となっている。そこで屋外環境下で開口部の日射熱取得率を測定できる装置を制作し、鹿児島大学建築学科棟屋上で試験を行った。 試験装置は1面に開口を持つ直方体の箱で、開口部を通して室内に侵入する日射熱を測定する。侵入熱量の測定方法として、日射熱吸収体(アブソーバ)出入口での冷媒の温度差と流量から熱量を測定する方法(熱量計測定法)とアブソーバ表面に貼付した熱流計で直接的に熱量を測定する方法(熱流計測定法)を考案し、2種類の測定装置を作成した。予備試験として装置の開口部にガラスのみを設置し日射熱取得率を測定した結果、熱量計測定法では温度センサーの誤差の影響が大きく、十分な精度を得ることができなかった。この点については高精度の測温抵抗体に変更するなど継続して改良を試みている。 熱流計測定法に関しては、計算値との差が5%以内に収まることを確認した。この装置を用いて、ロールスクリーンおよびブラインドが付属した状態で窓の日射熱取得率を測定し、JIS A2103による計算値と比較した。ブラインドに関してはスラット角度の影響をみるため角度を変えて5回の測定を行った。測定値と計算値の差は最大でも10%程度となり、自然光を用いた日射熱取得率の測定が可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標としていた、日射熱取得率測定装置の作成と測定精度の確認をおこなった。また開口部にスクリーンやブラインドが付属した状態で日射熱取得率を測定し、計算値との比較をおこなった。測定値と計算値の差は10%以内であり、試験方法として実用的な精度が得られることを確認できた。一方、熱量計測定法と呼ぶ試験装置は温度センサーの誤差の影響が大きく、実用的な精度は得られていない。このことから自己点検の評価は、「おおむね順調に進展」とした。
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今後の研究の推進方策 |
熱流計測定法に関しては、実用的な測定精度が得られることを確認したが、室温の制御に課題が残ったので、細部を改良して測定精度の向上を試みる。また試験装置を増やして、同一気象条件下で比較測定ができるようにする。屋外での測定は気温や日射量などの環境条件が変化するので、同じ試験体でも測定結果にばらつきが見られる。基準となる試験体を定めて、複数の試験装置で同時に測定することで、付属部材の日射熱取得率を定量的に評価できるようになる。試料については、ロールスクリーンで測定値と計算値の差が大きくなった。誤差の要因がスクリーン生地の光学特性によるものなのか、計算法の問題なのか課題として残ったので、スクリーン類の測定を優先して、数値計算との差について考察を進める。 熱量計測定法は現段階では十分な測定精度が得られていないが、室温の制御や日射量の変化への応答で優れており、引き続き測定装置の開発を進める。熱流計測定法と熱量計測定法でほぼ同等の精度が得られれば、開口部の日射熱取得率測定法の信頼性を裏付ける根拠となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定装置の制作に時間がかかったことと、夏期に天候不順が続いて屋上での測定が計画通りに進まなかったことが主な理由。試験装置を設置した建築棟の屋上は塔屋の影響で午後にしか日が当たらないため実験は午後に限定される。平成28年度は午前中晴れていても午後から天気が崩れる日が続いたため、計画通りに実験ができなかった。また得られた測定結果を分析した結果、十分な精度が得られていないことが判明したため、その原因がわかるまで次の予算執行を先延ばししたことも理由として挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
これまで2つの試験方法を検討してきたが、そのうち1つは実用的な精度が得られることを確認できたので、この試験装置の開発に予算を重点的に使用する。それと平行して、もう1つの測定装置の改良も継続し、平成29年度中には2つの試験方法を確立する。
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