研究課題/領域番号 |
16K06615
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
小林 謙介 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (30581839)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | ライフサイクルアセスメント / インベントリデータ / バックグラウンドデータ / CO2排出量 |
研究実績の概要 |
CO2排出量などの環境負荷量を算出するためには、ライフサイクルアセスメントの実施が不可欠である。LCA実施において、バックグラウンドデータベースは必要不可欠である。我が国のバックグラウンドデータベースは整備が進んでいる。輸入が多い我が国にとって海外の評価が必要不可欠となるが、海外のデータベース整備は十分ではない。本研究は、日本のバックグラウンドデータベースを用いて、海外のバックグラウンドデータを推計する手法を構築するものである。 当該年度は、アジア地域を対象に特に日本への輸入額が多い主要7か国(中国、韓国、台湾、タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシア)に対象を拡大し、これらの国についての推計手法を構築した。また、対象とする環境負荷物質もエネルギー消費量、CO2排出量だけではなく、SO2やNOxなどについても推計手法の構築を試みた。 具体的に、我が国最大級のバックグラウンドデータベースであるIDEA Ver.2を用いて推計することを前提とし、①電力原単位、②燃焼効率、③燃料の種類別のエネルギー構成比のデータを対象国のデータに変換することで推計する手法を提案した。また、データが収集できた場合は、④環境対策(例:脱硫・脱硝)⑤燃料の質(例:硫黄含有量)も考慮した。これらの推計のために必要な統計データ等を対象国それぞれについて調査し、各国で整備されている統計データを用いて、本旨に合致するような推計方法を提案することができた。なお、中国については、④について詳細なデータを得ることができたため、他に比べて精度の高い推計が期待できる。 また、以上を踏まえて、推計のために必要な各種のデータベースも構築でき、IDEA Ver.2に実装すれば推計データベースを構築できる段階まで到達できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度実施した、(ア) 比較・検証用のインベントリデータ整備、(イ) インベントリデータに差異を生じさせる因子の分析を踏まえて、基礎的な(エ) 推計手法の構築を行った。また、可能な限り精度の高い推計とするために、(ウ) 各国で容易に収集可能なデータ(統計資料等)の調査を行い、各国で入手可能なデータを活用した(エ) 推計手法の構築を行った。 現状の進捗としては、まず、世界各国共通で入手できる統計データ等から推計する手法が構築できた。従って、(ア)~(エ)に関しては、最低水準には到達できたと考える。また、より精度の高い推計を行うため、各国で入手可能な統計を活用した推計は、日本への輸入額が多いアジア7か国ではあるが推計手法を構築できた。加えて、中国を中心として、SOxやNOxの推計方法の検討もできており、進捗としてはおおむね順調に進んでいると判断している。 本研究は、1年目が実質5か月であったため、研究期間が1年5か月ではあるが、上述のような進捗状況から、当初の2年目の計画内容をおおむね達成できていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は本研究の最終年度となる。2年目までに実施した内容を踏まえ、できるだけ多くの環境負荷物質の推計、また、できるだけ精度高く推計できる国の数を増やすため、主要取引国について個別に入手可能なデータを調査し、手法を検討する。また精度の検証も実施する。 (イ) 他の環境負荷物質についての推計方法の検討:インベントリデータに差異を生じさせ因子の分析し、エネルギー・CO2・SO2の環境負荷物質以外の項目についての推計手法の検討を行う。 (ウ) 各国で容易に収集可能なデータ(統計資料等)の調査:これまでの蓄積と(イ)の結果をもとに、環境負荷排出原単位に大きな差異を生じさせる要因に着目し、推計に活用でき得るデータの整備状況について調査する。特に、これまで検討してきた主要アジア7か国以外も含めて調査を行う。 (エ) 推計手法の構築:(ア)~(ウ)をもとに、エネルギー・CO2・SO2以外の環境負荷物質の海外のインベントリデータの簡易推計手法を構築する。また、我が国と取引の多い国(アジア以外も含めて)の詳細な推計手法の構築を行う。 (オ)手法を構築した環境負荷物質についての収集データと推計データの比較による精度検証:推計結果をもとに、様々な環境負荷物質の推計データベースを構築し、(ア)で収集したデータなどと比較して、推計精度を明らかにする。なお、推計したデータベースはIDEAに実装する。
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