環境影響を定量化するライフサイクルアセスメント(LCA)は以前にも増し様々に活用されている。我が国や先進国では、評価に不可欠な原単位データベース(DB)が開発されてきているほか、一部の国では主要製品等のデータが作成されているが、網羅的なDBを持つ国は世界的にはごく僅かである。建築分野でも輸入建材が少なくなく、最近では国産と輸入の差異を意識した評価も増加してきている。そこで、本研究は日本の原単位DBから海外のデータを簡易かつ可能な限り精度高く推計する手法を構築することを目的とした。具体的には以下の内容を検討した。 (ア)比較・検証用のインベントリデータ整備:海外における主要な材料等のデータを収集し、国ごとの違いを明らかにした。 (イ)インベントリデータに差異を生じさせる因子の分析:(ア)の収集データをもとに、各国のCO2などの排出量の違いが生じる要因を分析し、電力原単位、燃焼効率、燃焼用燃料構成比、燃料の質、環境対策等が大きな要因になっていることを示した。 (ウ)各国で容易に収集可能なデータ(統計資料等)の調査:推計に活用でき得るデータの整備状況について調査し、世界各国で共通して得られるIEAの統計資料や、日本と取引量が多い主要な12か国については、それぞれの国の個別の統計等を収集し、それらを基にした手法の構築・データの活用可能性を明らかにした。 (エ)推計手法の構築:予備調査で作成した試案や、(ア)~(ウ)をもとに、海外データの簡易推計手法を構築した。 (オ)収集データと推計データの比較による精度検証:(ア)~(エ)の結果をもとに、推計データベースを構築し、(ア)で収集したデータとの比較、日本のデータを同様の方法で推計し比較することで、推計精度を明らかにした。その結果、おおむね良好な精度を担保できていることが分かった。
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