研究課題/領域番号 |
16K06618
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
西川 豊宏 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 准教授 (80594069)
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研究分担者 |
中野 民雄 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 准教授 (00610578)
小瀬 博之 東洋大学, 総合情報学部, 教授 (20302961)
笠井 利浩 福井工業大学, 環境情報学部, 教授 (60279396)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 給排水 / 雨水利活用 / ライフライン / 自然災害 / レジリエンス |
研究実績の概要 |
4つの柱(テーマ(Ⅰ)~(Ⅳ)により形成された本研究の現在までの進捗状況は以下の通りである。(Ⅰ)給排水ライフラインの災害リスクと雨水利活用に関する調査・評価:自治体が発行するハザードマップや気象データに基づき、自然災害と建築設備被害の因果関係に関して資料収集や現地調査を実施した。(Ⅱ)給排水設備ライフラインの災害回復性評価:建物内に配置されている消火設備を含む給排水設備系統を電算機上でモデル化し、数値計算により地震動に対する配管システムの脆弱箇所をスクリーニングした。(Ⅲ)設備機器・器具、配管等の開発と実験:過去の設備被害調査結果や熊本地震の被害状況を調査し、数値計算において物理現象の再現が困難な機器破損のメカニズムとして、スプリンクラー末端部配管(巻き出し管)、置き基礎に支持された横引き配管、U字バンドの拘束条件に特定することができた。(Ⅳ)確率論的破壊力学に基づく給排水設備の災害リスク評価:工学院大学新宿キャンパスを対象に、給排水設備の施工状況を踏まえた数値計算のためのモデル化を行った(追記:この評価結果の成果物の一部がベントレー・システムズBe Inspired Awards2016ノミネート作品となった。)。今年度における研究成果の外部発信の概要としては、審査付き論文が2件(空気調和・衛生工学会論文集)、国際学会投稿論文(CIBW062国際シンポジウム:査読無)が3件、国内学会口頭発表論文(査読無)が15件(日本建築学会大会6件、空気調和衛生工学会学術講演会1件、日本雨水資源化システム学会研究発表会8件)であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(Ⅰ)給排水ライフラインの災害リスクと雨水利活用に関する調査・評価については、主に日本建築学会環境工学委員会水環境運営委員会傘下に設置されている小委員会(給排水設備の災害レジリエンス検討小委員会)での活動と連動しており、自然災害(東日本大震災、広島土砂災害、熊本地震)においてのライフライン被害や復旧状況の文献調査、現地調査、企業の取り組み事例として森ビルのBCP対策の概況を情報共有、地方中核都市である静岡県浜松市、神奈川県厚木市、広島県広島市他のBCP、LCP対策の現状について情報収集した。 (Ⅱ)給排水設備ライフラインの災害回復性評価については、大災害時に逃げ込むことの出来る建築として、東京都西新宿に立地する工学院大学新宿キャンパスを評価対象に給排水設備を実際の施工状況を踏まえて電算機上でモデル化し、数値計算により地震動に耐震性を評価した。(Ⅲ)設備機器・器具、配管等の開発と実験については、(Ⅱ)で抽出された脆弱箇所の実物大(評価対象機器によっては縮小)実験の計画立案を行っており2年度以降に実施する予定である。 (Ⅳ)確率論的破壊力学に基づく給排水設備の災害リスク評価については、工学院大学新宿キャンパスを対象とした既存の給排水ライフラインにかかわる巨大地震においての被害予測は概ね実施され、2年度に実施予定のテーマ(Ⅱ)の実験結果を踏まえ、3年度において総合的な災害リスク評価として総括する予定である。また、この研究に関連して、建築物の水使用の現状や雨水利活用建築の環境評価を並行して実施しており、テーマ(Ⅰ)の研究成果と連携させることも検討中である。以上から、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展しているが、2016年4月の熊本地震において、屋上の配管用置き基礎の転倒に起因する設備被害が予期しない課題となっており、2年度に計画している実験計画への対応が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
テーマ(Ⅰ)は、給排水ライフライン、自然災害に対するリスク調査、雨水利活用など対象が広範に渡るため、研究分担者と連携しての研究推進を今後も継続するとともに研究成果の外部発信を適時検討する。 テーマ(Ⅱ)~(Ⅳ)は、研究代表者が中心となり、研究初年度の地震被害調査の結果を基に、建築設備とりわけ給排水ライフラインに関連する損傷メカニズムが複雑な場合を実験的に再現し、破壊に至るメカニズムを定量的に解明するとともに、有効な対策を立案する予定である。この結果は、研究3年度において災害リスクと建築設備リスクの評価結果に基づき、事業継続性向上のための対策へと発展し、不確実性をともなうリスク(危機)とそれに対するベネフィット(便益)の相反性の定量化から災害対策実施の動機付けとなる指標への展開を試み、研究を総括する予定である。 以上、各テーマにおいて、研究代表者および研究分担者は課題整理と情報収集のため、研究初年度は単独での研究活動に重きをおいたが、2年度以降では、研究分担者との連携を一層密なものとし、雨水利活用に関する地域別水賦存特性については笠井利浩教授(福井工業大学/日本建築学会雨水活用推進小委員会主査)と、建築物の給排水設備の水消費や節水、省エネルギーに関する調査と評価は小瀬博之教授(東洋大学/同水環境における省資源・省エネの定量 的評価手法検討小委員会主査)と研究成果の共有と連携を図っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
小瀬博之教授(研究分担者・東洋大学):全額次年度繰り越しとなった理由は、2016年度にスロバキア・コシツェで開催された第42回CIBW062国際シンポジウムにおいて、研究成果発表を次年度に見送ったため、当初予定していた国外旅費として執行しなかったことによる。 笠井利浩教授(研究分担者・福井工業大学):次年度繰越金が生じた理由は、国内(長崎)出張において利用したレンタカー料金が当初予定に比べて低廉であったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
小瀬博之教授(研究分担者・東洋大学):研究成果を広く外部発信するため、2017年度にオランダで開催予定のCIBW062国際シンポジウムへの参加費並びに国外旅費として来年度予算と合算して有効に活用する予定である。 笠井利浩教授(研究分担者・福井工業大学):次年度においては、研究連絡会(研究代表者・分担者による定例会議)の開催回数も増加するため、国内旅費として次年度予算と合算して有効に活用する予定である。
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