本研究の目的は、住宅で発生する鉛直振動を対象に、環境振動の評価基準を提案することである。対象とする振動源としては、住宅で発生する歩行などの日常動作と外部で発生し、伝搬してくる道路交通や鉄道による交通振動源である。 最終年度では、10分程度の短い官能検査だけではなく、振動環境に対する生活実感を明らかにすることを目的に、長期間に渡る振動評価を明らかにすることを試みた。 まず、日常生活における環境振動の実情を把握することを目的として、過去1年間の振動暴露を対象とし、アンケート調査を行った。過去1年間での現住居における振動に対して回答してもらった。アンケート調査の全回答者は994名で、男性が673名、女性が282名、性別不明が39名であった。「過去1年間で、家にいるときに地震以外の振動を感じるか」の質問に対して、全回答者の約40%の人が住宅における実生活の中で振動を知覚しているという結果であった。振動を感じると回答した393名に対し、振動に対する総合評価について回答してもらった結果、「振動がストレスとなり、できる事なら引っ越したい」、「振動を感じ不快に思うが、我慢できる程度」、「振動を感じるが、少し気になる程度」と回答した人を合わせると約58%を占め、振動が日常生活に影響を与えていることがわかった。 さらに、対象者を選定し、対象者が居住する実住宅において実験を行った。実験内容は実住宅での振動測定と居住者のアンケート調査とした。50物件の住宅で72名の居住者を対象に、1日を対象とした振動測定とアンケート調査を実施した。その結果、様々な分析を行い、評価尺度としては、等価振動レベルに、振動知覚秒数又は回数の対数を考慮する評価尺度が気になる度合や不快度合と良い対応を示すことがわかった。さらに、それぞれの評価尺度に対して、振動の気になる度合に対する基準を提案することができた。
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