本研究の目的は人口や経済の規模が縮小する「都市縮減社会」の住居系市街地で生じる遊休空間(低未利用の土地・建物)、ならびに既存の地域自治組織を合わせて再編する「リスケーリング型整備手法」の制度設計と適用可能性検討を行うことにある。 三つ設定した各年度の研究課題の内、平成30年度は「研究課題(3)地域自治組織を市街地整備の主体とする組織的再構築(リストラクチャリング)」を扱い、六つあるステップの5・6の研究を実施した。 ステップ5:都市縮減社会におけるリスケーリング型整備手法の制度設計…リスケーリング型整備手法の制度設計、制度の適用可能性検討を行うための事例研究を進めた。具体的には①市街化区域縁辺部を念頭に、埼玉県の「旧暫定逆線引き地区」の現状を知ることから、低未利用の土地・建物を漸進的に市街地整備の俎上に載せる際の課題検討を進めた。②空洞化する都市中心部に近接する住居系市街地として、東京都の「不燃化特区」を事例に宅地の交換・分合による市街地整備の可能性を考察した。③郊外住宅団地である福島市蓬莱団地を事例とした遊休空間としての空き家問題の発生に関する調査を行い、その解決に望まれる地域自治組織のあり方を検討した。 ステップ6:都市縮減社会におけるリスケーリング型整備手法の適用可能性検討…一連の研究結果をまとめた。旧暫定逆線引き地区では区画整理に替わる地区計画による権利操作が進まず、低未利用地の活用に至っていない。不燃化特区では公的住宅の導入など行政の介入が相当必要であり、公費負担などの改善の仕組みが必要である。郊外住宅団地では高齢化による地域自治組織の機能低下が進み、再編自体、困難になっている。本研究では特に旧暫定逆線引き地区を中心事例とし、追加の自治体調査や所沢市における事例研究を進め、宅地の交換・分合を図る手法、それを支える地域自治組織のあり方を検討した。
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