研究課題/領域番号 |
16K06631
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山本 幸子 筑波大学, システム情報系, 准教授 (30509526)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地方自治体 / 定住支援 / 移住支援 / 転入者 / 数量化Ⅲ類 / 類型化 |
研究実績の概要 |
1)大区分・小区分別支援内容の抽出と特徴把握:移住・定住支援策について、情報提供・相談、体験、就業、住まい確保、定住の5つに大区分を設定した上で、それぞれ小区分(大区分ごとの支援内容の細区分)別支援内容を抽出し、特徴を整理した。その結果、「就業」と「住まい確保」では金銭的支援、「定住」では子育て世帯や若年世帯をターゲットとした支援の割合が、それぞれ大きいことが明らかとなった。 2)自治体の支援策実施パターンの類型化:2016年度に支援策を実施している 621自治体の小区分別支援策データをもとに、数量化Ⅲ類を用いて実施パターンの分析を行った。さらに数量化Ⅲ類で得たサンプルスコアをもとにクラスター分析(Word法)によって自治体の類型化を行った結果、8つの類型を得た。 3)自治体類型の特徴分析:8つの自治体類型について、小区分別支援策の実施率と地域特性との関連を分析し特徴を把握した。自治体の地域特性については、人口や高齢化率等の10指標を用いて主成分分析を行い、その得点によってクラスター分析により9つの類型を得た。その結果、自治体規模が小さく、移住・定住支援策の必要性の高い地域や生活基盤の充実していない地域が多い自治体では、人的・財政的余裕がない中で、定住者に向けた生活基盤の充実を目的とした金銭的支援が中心の支援システムを構築していることが明らかになった。一方で、人口規模・密度や財政力指数が大きく、教育・居住・健康・医療環境の充実した自治体では、非金銭支援の実施率が高いことが明らかとなった。 4)事例分析:支援策類型と地域特性の組み合わせから、計10の自治体(南砺市、出雲市、常陸太田市、喬木村、熊野市、設楽町、葛巻町、西会津町、鹿角市、三沢市)を対象に担当部署に対するヒアリング調査を実施し、支援システムの構造及び課題を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度は、移住・定住支援策を実施する621の自治体を対象に、数量化Ⅲ類等を用いて定量的に分析を行い、支援システムの構造を把握することができた。また、予定していたよりも多い10自治体の事例調査を実施することができた。一方で、転入者に対するヒアリング調査を実施することができなかった。以上より、おおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
1)山間・島嶼地域等の移住・定住支援策の必要が高い地域を対象とした、包括的移住支援システムの事例調査:自治体担当部署へのヒアリング調査により、人的・財政的余裕がなく、また既存の宿泊施設や就業環境が未整備の中での、自治体の支援方法について検討を行う。また転入者に対する聞き取り調査により、自治体の支援策の有効性を明らかにする。 2)研究成果のまとめと提案:これまでの定量的分析結果と事例調査結果をもとに、地域類型別に支援内容の比較分析を行い、重点化・差異化すべき支援内容を明確にする。特に山間・島嶼地域等の条件が厳しい地域における自治体支援の方法についても検討を行う。その上で地域類型別に包括的移住支援システムのパターンモデルを提案するとともに、普遍化に向けた計画課題を抽出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が2018年2月より産休に入り、体調の都合により予定していた調査を実施することができなかったため。復帰後に調査費および調査結果整理の謝金に使用する計画である。
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