2020年度は2019年度に引き続き、就業支援に着目し、直接的な自治体の移住支援事業ではないが、間接的に移住支援に繋がっている取り組みを対象に、支援の仕組みと移住者へのヒアリングを行なった。 1)就農支援の一環として「第三者継承」に着目し、茨城県内で第三者継承支援事業を実施している3自治体へのヒアリング及び8名の就農者へのヒアリングを実施した。支援事業の効果として、金銭的な支援だけでなく、関連機関のサポート等就農開始後の定着・継続に効果があることが明らかになった。一方、住宅の確保については個人に委ねられており苦労している移住者も存在することが分かった。 2)茨城県JAやさと有機栽培部会の新規就農支援に着目し、有機栽培部会へのヒアリング及び有機栽培部会を通して移住した就農者13組にヒアリングを実施した。有機栽培部会では販路の確保や農地の仲介等、就農に関して包括的に支援をしており、就農後に確実に生計を成り立たせることができる点が移住を促していること、移住後の地域コミュニティへの定着においては有機栽培部会の女性同士の繋がりが好影響を与えていることが明らかになった。一方、住宅の確保については空き家が多い地域であるにもかかわらず、希望の農家住宅を取得することは難しいことが課題として指摘された。 3)研究成果のまとめと提案:これまでの定量的分析結果と事例調査結果をもとに、地域類型別に支援内容の比較分析を行い、重点化・差異化すべき支援内容を明確にした上で、自治体が主体で実施するものと、民間と連携して実施するものについて、地域特性を踏まえながら整理した。その上で、地域類型別に包括的移住支援システムのパターンモデルを提案し、普遍化に向けた計画課題を抽出した。
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