研究課題/領域番号 |
16K06633
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
内田 奈芳美 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (10424798)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | らしさ / ジェントリフィケーション / まちづくり |
研究実績の概要 |
まず理論部分として、昨年度執筆した「まちづくり教書」において「対資本力のまちづくり」としてのジェントリフィケーションと、「らしさ」喪失のまちづくりについての論を執筆したが、この二つの側面は、開発・観光プレッシャーの中でのまちづくりとしての主要課題であり、社会的影響とそこから生まれた「対応」としてのまちづくりの発展が求められる。そういった「対応」としての論の展開から、空間における「公」の喪失と「共」の台頭についての論を「東京に「公」空間はあるか」として執筆した。こういった社会的「対応」が新たなまちづくりを生じさせることも、ジェントリフィケーション現象の土台的理論であると考えている。 次にケーススタディーとしては、現地の協力を十分に受けることが可能である金沢市に集中して、北陸新幹線開通後の金沢市の実態を対象としたアクションリサーチを続けている。アクションリサーチでは「金沢らしさ」意識の議論として、現場のまちづくり活動における議論に参加し、「らしさ」のための共通言語化を行ってきた。このことを踏まえて、「コミュニティ活動分析」として、具体的な「らしさ」づくりの検証と合わせた提言づくりを行っている。この提言もいわば「対応」としての新たなまちづくりであり、そういった視点からも「らしさ」再創造の理論化を行っていく。埼玉においては、人口流入により変化した地域の実態について調査・分析を行い、研究発表を行った。特徴の異なる二つのエリアを対比することで、前述した「対応」としてのまちづくりがより明確に論として構築されると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
論としての構築に関しては、これまでの蓄積のもと、アウトプットがなされてきた。また、ケーススタディーについては、金沢では十分な協力が得られるため、アクションリサーチは十分におこなってくることができたと考えている。それらをバックアップするためのデータ収集と、比較としての東京郊外のスタディがやや遅れていると考えているため、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究について、引きつづきアクションリサーチを行っていく予定である。申請時での枠組みにおいても、研究対象地域である金沢市での具体的な「らしさ」を担保するための提言作成を計画しており、そのことはアクションリサーチを通したコミュニティ活動分析として引きつづき行っていく。また、そのことが本研究課題の文脈から、社会的にどのような意味を持つのかを理論化していくことが今後必要であると考えている。その社会的意味をきちんと理論化し、外部に発表を行いたい。 比較としての東京郊外のスタディは引きつづき行っており、このことはまとまった論としてまとめていく必要があると考えている。埼玉県内を対象として、郊外都市の実態と「らしさ」について研究・分析を行っていく。これらのことが「らしさ」再解釈・再創造の理論化となるように、研究を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が参与観察に基づくため、調査ペースが自分で完全にコントロールできるものとはならない。その分次年度使用額が生じたと考えている。当該分は引きつづき旅費等調査のために用いるよう計画している。翌年度分として請求した助成金については、これからまとめをおこなっていくための経費として用いる予定としている。
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