「らしさ」の再創造における研究蓄積として、まず研究対象地である金沢市について、「金沢市における民間まちづくり提言の系譜」を学会発表した。本研究においては、アクションリサーチ対象主体も含めた民間団体がいかに金沢のまちづくりのあるべき姿を考え、提言してきたかを調査し、分析を行った。その中では、文化という文脈においても施設づくりへの提言から価値への提言へと変化してきたなど、こういった提言が蓄積されてきたことを通して、金沢のまちの価値を創造する試みが綿々と続けられてきたことを明らかにした。提言の主体は多様であり、人的基盤の多層性が金沢のまちづくりを支えてきたと言える。 次に、理論部分に関しては、「都市のオーセンティシティのゆらぎと解釈」を論考として執筆し、本論考の前半で「らしさ」の理論化を試みた。また、そのような「らしさ」が都市再生のための空間でどのように翻訳されているか、その要素と背景を論述し、そういった「らしさ」のための空間形成のありかたについて、考察を行った。 さらに、アクションリサーチに関しては、引き続き現地のステークホルダーと協働が十分に行える金沢市に集中して調査・分析・実践を行ってきた。現場での議論を通して、まちづくり提言である【世界趣都 金沢2030 実現への12のメソッド】を作成し、広く共有した。この中では「『金澤尺度』の熟成」など、「らしさ」のあり方についてこれまでの蓄積をふまえて提言を構築している。そして、それが実際の金沢のまちづくりでどう応用できるのか、フィードバックをふまえてそのあり方についてアクションリサーチを行い、「らしさ」という価値の理論化の現場における応用としての検証をおこなった。
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