研究課題/領域番号 |
16K06641
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
鈴木 克彦 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 教授 (10115983)
|
研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
キーワード | 建築協定 / 地域リソース / 住環境マネジメント / 居住再編 / 地域力 / 空き家活用 / 資源循環 / 民泊 |
研究実績の概要 |
成熟社会を迎え少子高齢化や人口減少等の影響で居住構造の再編が課題となっている建築協定地区を対象として、地域課題を自ら解決できる「地域力」を醸成しうるマネジメント手法の構築に向けて、開発当初からの制限内容の変遷を検証するとともに、昨年度に引き続いて自律的な住環境マネジメント活動の実態を明らかにし、「地域リソース循環型住環境マネジメント」のあり方を検討した。そのために以下のことを実施した。 1.各自治体による建築協定の運用実態を明らかにし、自動更新制の扱いや違反の未然防止策等について自治体ごとに対応が異なっている現状を明らかにした。2.大阪府内の14協定地区23名が参加して、ワールドカフェ方式のワークショップを開催し、建築協定の運営維持、規則運用、協定地区内での住まい方、協定地区外との連携等についての課題を抽出した。3.過去に実施した開発当初のまち並み景観、協定内容等のデータを整理し、成熟社会での住環境マネジメントの方向性について検討した。4.空き家活用対策として「民泊問題」が新たな課題となったことから、民泊条例の制定実態や建築協定地区での取り組みを調査し、住宅専用地域での民泊開業の問題点について整理した。5.地域コミュニティの再生に資する空き家活用の社会実験として、昨年度に引き続きDIY改修による空き家ストックの改修プロジェクトを実施し、地域リソースを循環活用した持続可能な再編デザインを具体化した。また、その過程においては、地域住民の参加によるワークショップを開催したり、改修後の活用実態についても明らかにした。6.タイ国バンコク市内の伝統的集落地区を対象として、地域リソースの循環活用によるコミュニティ再生方策に関するアンケート調査等を実施し、コミュニティが主体となった住環境ルールの有効性を検証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね研究計画どおりに実施できたが、建築協定の運営実態の事例調査については、さらに事例を追加していく必要がある。また、住宅宿泊事業法が制定され、建築協定地区においても民泊問題が顕在化したことから、新たな研究課題として取り上げる必要性が生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
住環境ルールの運営が定着し成熟過程にある建築協定地区の「地域力」を社会システムとして評定した上で、「地域力」の醸成プロセスや合意形成活動などのスキームの特徴を協定地区のタイプごとに把握し、地域住民が主体となった住環境ルールの有効活用による居住地再編に向けた持続的住環境マネジメント手法を検討していく。また、民泊問題が顕在化したことから、建築協定地区での民泊対応の実態を調査し、持続可能な居住地再編に向けた協定運営指針を提示する。さらに、地域リソースを循環活用した持続可能な再編デザインの具体化としての空き家改修も引き続き実施していく。これらの成果から、持続可能な成熟社会に向けた居住地再編に資する「地域リソース循環活用型マネジメントシステム」の構築に向けての建築協定制度の改善策と活用方法を提示する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
建築協定の運用に関する事例調査が、研究計画どおりに実行できなかった。これにより生じた次年度使用の助成金は翌年度分と合わせて、国内及び海外の事例調査を実施するために使用する。また、新たな課題として生じた民泊問題に関する調査を実施するための経費としても使用する。
|
備考 |
林野庁長官賞(再築大賞)受賞:未来をはぐくむ古民家『ついどはん』、ジャパトラ、2017.3、pp.12-13
|