本年度は、引き続きこれまで研究対象としてきた大阪府箕面市の桜ヶ丘住宅地において、ヒアリング調査を行なった複数土地所有者の土地・建物の登記簿、関連文献の収集などにより、さらに分析考察を行なった。複数土地を所有している居住者について、親世帯・子世帯の隣居・近居が可能となり、地域内で世代を超えた居住継続が可能となっていること、特に対象住宅改造博覧会の住宅などに居住する世帯では、住宅や地域への愛着が強く、住宅を維持しようとする意識が高いことを明らかにした。 研究のまとめとして、戸建て住宅地の維持・更新に対する知見を以下にまとめる。 近代的な住宅地開発における、一世帯=一敷地=一住宅に対して、現代の多様な家族とそのライフスタイルに対応した家族(複数世帯)=複数敷地(大小の敷地、あるいは大規模の敷地)=複数住宅(親世帯、子世帯)という図式・視点が今後の住宅地の維持・更新に寄与するのではないかとういことである。住宅地全体としては、均一な敷地の土地・住宅の供給ではなく、大小の規模、購入層が異なる世帯を想定した計画が、家族の変容、世代交代に合わせた住宅地の維持、更新に寄与するのではないかと考えられる。 大正住宅改造博覧会により開発された土地とその後の土地会社や電鉄会社によって開発された土地では、その住宅、住宅地に対する価値や愛着の醸成のされ方も異なり、その価値や愛着が歴史的文化的文脈が育まれた住宅地に対するものであるとも推察できた。そこに、郊外住宅地、戸建て住宅地における受け継ぐべき財産(家産)となる可能性を示唆した。 一様に均質な住宅による住宅地開発ではなく、規模の大小や、住宅地の文化的核となる部分を計画することによって、上記で述べたような家族や住まう人、住宅が変容しつつも受け継がれていくのではないかと考える。
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