研究課題/領域番号 |
16K06645
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
田口 太郎 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (20367139)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 集落自治 / 転出子 / 関係人口 |
研究実績の概要 |
中山間地域を始めとした人口減少地帯では過疎・高齢化の進展により、集落維持の担い手となる若年人口の減少が地域の将来に暗い影を落としている。一方で、交通インフラの発達により、都市部からこうした過疎地域へのアクセスはかつてとは比較にならないほど容易になった。そこで、本研究では、いわゆる「住民」のみならず、近隣自治体や遠方の都市部に住むような関係者も含めた自治の概念として「ネットワーク型自治」を提唱し、その可能性や構築手法について実践的研究進めている。 一方で、数年前から用語「関係人口」が本ターマと類似した概念として提示され、急速に普及している。しかし、多くの「関係人口論」は都市部に暮らす人々のQOL向上に視点を置いており、過疎地域における「自治」という発想は余り持たれていない。 このような状況から、香川県まんのう町南部の旧琴南町を主たるフィールドとして、地域自治を下支えする居住者以外の存在としての転出子による集落自治の可能性を模索するために、毎月「転出子懇談会」を開催。転出子による集落サポートの可能性を検討してきた。この結果、日常的な買い物支援や通院支援などは主として近隣に住む子弟が担う事を前提とした上で、荒天時の水源、道路管理や緊急時の対応などについては転出子同士の連携網を構築する上での対応可能性を見出している。 また、全国的にも「関係人口」が地域の日常的な暮らしと乖離した部分で注目され散ることから、地域自治と関係人口についての論考を多く発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ネットワーク型自治の論点整理については概ね順調に進んでいるが、フィールドワークを通じて進めている具体的なアクションについては想定よりも遅れている。というのも、当初は転出子による買い物支援や通院、日常的な生活サポートまでを含めた自治を想定していたが、サポートを受ける側や転出子の認識はそこまで進んでおらず、当初想定していた仮説とは異なったものだった。故に、現在は緊急時や見守りなどを中心とした安心・安全の確保のレベルを転出子によるサポートと設定し直した上で、具体的検討の段階に進めようとしている。 実際に2017年に開催していた転出子懇談会ではネットワーク型自治の理念の伝達から先に進むことが難しかったものの、孤独死の回避や荒天後の水源確保、道路の確保などより深刻度の高い論点については共感を得られたため、2018年3月からその具体的な検討スケジュールについても理解をえられ、2018年夏の社会実験の実施に向けた具体的検討段階に入ることが出来ている。 このように、地域住民側の理解を必要とする部分において遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は最終年度となることから、地域における課題認識の醸成に向けて開発してきた手法の講評やフィールドにおける社会実験などを通じた事例づくりを通じて、実施の上での課題整理を行い、社会に広く還元していく。 特に、地方創生の流れの中で、「関係人口」を始めとした“流行り施策”が広がることが想定される中で「ネットワーク型自治」とその担い手としての「関係人口」を体系的に整理、発表していくことが重要であることから、積極的な体外発表を行う予定である。 また、地域おこし協力隊を始めとした外部人材による地域づくりのプロセスを学ぶツールとして以前開発した「地域づくりコーディネート・ゲーム」の更新を行うことで、外的な主体も含めた地域づくりのプロセスデザインを広く広めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
<理由>当初予定していたよりも、安価で研究が進められているため、次年度使用額が生じた。 <計画>研究成果の学会発表や社会還元に向けた成果品の作成に向け、PCやアプリケーションソフトの購入、発表費、印刷費などで使用する予定である。
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