これまで開発してきたた列挙による凸空間での被覆の方法は,規則的な平面ではある程度の規模まで計算可能であるが,不規則な平面では小規模でも列挙が難しくなることがわかった.そこで今年度は,列挙に代わり混合整数計画問題として凸被覆問題を定式化し,街区レベルの比較的大規模な空間において検証を行った.まず最小個数の極大な凸領域の被覆の組み合わせの個数を求める問題を,整数計画問題として定式化した.次に,求めた個数の被覆の組み合わせ集合の中で,使用される凸多角形の面積の和が最大なものを,混合整数計画問題として定式化して求めた.検証では,Space Syntaxの研究でよく用いられる,フランスの集落Gassinの平面図を用いた.検証の結果,これまでの列挙のアプローチでは困難であった規模の最適な被覆を,現実的な時間で求解できることがわかった. さらに,スペースシンタックスの基本的な手法で,空間を被覆する単位の一つである3次元Isovistに関して, その情報をGPUのZ-Bufferから深度画像として高速に取得し,それを深層学習の方法で予測に用いる方法を開発してきた.今年度はこの方法を実世界の画像でも適用させるため,画像変換手法のpix2pixを用いて,CG内で作成した全方位のRGB画像と深度画像のペアから,疑似の深度画像を生成する方法を開発した.街路空間として,CGマーケットで販売されている渋谷と日本の地方の市街地を模した二つの3Dモデルを用い,街路上に人や車のモデルを設置するなどの補完を行った.各々500地点ほどで全方位画像を撮影したのちpix2pixの学習を行い,得られたモデルにGoogle Street Viewの全方位画像を入力し,生成された深度画像がどの程度現実に即しているかを,目視により評価した.その結果,建物部分については,自然と感じられる深度画像が生成できることを確認した.
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