研究課題/領域番号 |
16K06654
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
藤田 忍 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (50190038)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大阪長屋 / オープンナガヤ大阪 / 創造的不動産情報 / メディアの機能分担 / オープンナガヤスクール / オープンミーティング / 学術機関リポジトリ / AR(拡張現実) |
研究実績の概要 |
研究計画の1~3「不動産情報提供者、長屋所有者、長屋居住者へのヒアリング」に加えて、初年度追加で実施した「オープンナガヤスクール」を、福祉、耐震、お風呂、リノベーションなど多彩なサブテーマを立てて、所有者、居住者を講師に4回発展的に開催した。また、オープンナガヤシンポジウムを大阪、横浜で開催し、特に大阪では長屋所有者、居住者を含む110名の参加者を得ることができ、大規模に情報を交流した。 計画の4「メディアミックスによる情報発信」の今年度の最大の成果はマスメディアと口コミである。新聞、ラジオ、TVにより10件以上取り上げられ、ソーシャルメディア(FB,YoutubeによるPV)とミックスし、大阪長屋、オープンナガヤについて社会的に広く認知されることとなった。これらをベースとしながらも、各イベントの来場者からは、参加の直接の動機が口コミにあることが分かり、生き生きした長屋情報:創造的不動産情報におけるメディアの種類による機能分担の構造が浮き彫りとなった。 計画の6.「大阪長屋保全ネットワークの拡大、強化、長屋保全システム構築」に相当するのは、下記、計画5.「オープンナガヤ大阪」の実行委員会の開催であるが、これを引き続きオープンミーティング形式で開催したことと、上記シンポジウム開催によって、前進させることができた。 こうした一連の成果は、最終的に計画5.「第7回オープンナガヤ大阪2017」に反映され、2017年11月11、12両日、大阪市内を中心に40会場+4まち歩きプログラム、来場者数のべ3,500人という過去最大規模の数字に表れている。オープンナガヤスクール、シンポジウム、ギャラリー、通年化、オープンミーティング、のいずれもが、当初研究計画になかった創造的試みであり、これらを付加することによって本年度の社会実験は、当初目標を大幅に超過達成したと自己評価している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.本研究課題と並行して取り組んだ大阪長屋居住文化研究会(主査:藤田)による「大阪長屋の保全活用とネットワーク形成に関する研究」の報告書(その1、2)を、本年3月大阪市立大学・学術機関リポジトリにおいて、ウェブ上に公開し、DOIを得た。研究成果の公開とともに、先端的な情報提供システムの獲得、活用という意義がある。 2.また、上記研究によって、第5回福祉住環境サミット・福祉住環境アワード「住まいづくり部門」優秀賞を受賞した。本研究課題をめぐる、社会的なニーズが高まっている。 3.概要では字数制限で述べられなかったが、本年1月に本研究課題に関する招待講演の会場でAR(拡張現実)をまちづくりに如何に活用するかという、社会実験を試行的に実施し、その可能性を検討した。これを不動産情報提供の創造的ツールとして、オープンナガヤのフィールドへ応用するという研究課題が浮かび上がっている。 4.本研究課題に先立って2013年に出版した共著「いきている長屋 大阪市大モデルの構築」で、2018年度日本建築学会著作賞を受賞した。この受賞理由では、出版後のオープンナガヤをはじめとした研究、実践の発展、広がり、波及効果が、注目されており、本研究課題を取り巻く学術ネットワークが社会的に高く評価されたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度、2年度は、申請者の研究室の大学院生がオープンナガヤの実行委員会事務局長を担ったが、申請者がこの3月で定年退職したため、事務局長を研究協力者の指導する大学院生に変更した。事務局体制、運営を見直し再編成する必要があり、これが第一の課題である。 第二に「オープンナガヤスクール、通年化、オープンミーティング、メディアミックス」によって、「第8回オープンナガヤ大阪2018」を大規模に開催する予定であるが、強化すべき課題を挙げると(1)マスメディアでは特にTVの活用、(2)ソーシャルメディアではツイッター、instagrumの活用、(3)ネットワークでは、賃貸長屋を大量に所有している大規模大家さんが大阪には存在していることから、こことの関係を強化する点の、3点である。 第三に新たな方策として、上記したARによって創造的不動産情報提供の実験を試行する。 第四に最終年度としての研究の総括を行う。実践面では、長屋改修の大阪市大モデルの構築、普及およびオープンナガヤ大阪の実施による成果を整理し、理論面では、担い手である長屋人、創造的不動産情報、メディアミックスなどの概念を整理し、その関係すなわちシステムを描く。
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備考 |
上記2編の報告書は、大阪市大・学術機関リポジトリにて公開(2018.3.8)の上、DOI(デジタルオブジェクト識別子)を取得した。
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