本研究は精神科救急入院料病棟(以下、精神科救急病棟)の環境に着目し、EBDの視点から早期退院を促す治癒環境を解明することを目的としている。空間整備状況を把握するとともに、看護拠点の変化が治癒環境に与える影響を明らかにしていく。H30年度は3年目、最終年度にあたる。 1年目では、調査対象A病院の改修前調査を実施した。 2年目では、病棟環境を把握するためのアンケート調査及び海外調査を実施した。全国精神科救急病棟を有する病院に病院の建築概要、クリニカルパス導入の有無、クリニカルパスと空間構成の関連性、看護拠点であるスタッフステーションと病室、共用空間の位置関係、癒しの環境に関するアンケート調査を実施した。海外調査においては、ヘルシンキ周辺に立地する精神疾患患者のグループホーム3箇所にて行動観察調査を実施し、スタッフと患者の関わりを中心に分析を進め 最終年度にあたる今年度では、急性期児童思春期病棟(以下、児童病棟)3箇所を対象とした調査を実施した。スタッフと患者の関わり方及びスタッフステーションのあり方に着目し、初年度の成人病棟との比較を行った。児童病棟は身体的看護行為を必要とするスタッフとの関わりの必然性が成人病棟より低く、結果的にスタッフが患者との関わりが少ない結果となった。一方で、患者がSSの窓を叩くなどでスタッフステーションに働きかける姿も多く見られた。スタッフが症状が比較的落ち付いている患者との関わりが少なくなっている要因の一つとして、閉じたスタッフステーションの形が挙げられる。また、記録などスタッフステーション内で実施する業務のあり方への見直しの必要性も示された。 本研究を通して、寄り添うことなど直接患者に介入しない関わり方を重要な看護行為の一つとして位置づけることができた。このような関わり方を促すことができる看護拠点のあり方をハード、ソフトの両側面から検討した。
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