研究課題/領域番号 |
16K06657
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研究機関 | 東北芸術工科大学 |
研究代表者 |
馬場 正尊 東北芸術工科大学, デザイン工学部, 教授 (70515197)
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研究分担者 |
中江 研 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (40324933)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エリアリノベーション / 工作的建築 / 工作的都市 / 公民連携 / 衰退の先にある風景 / クリエイティブローカール / テンポラリーユース / PPP |
研究実績の概要 |
本年度の代表的な成果として「クリエイティブローカル/エリアリノベーション海外編」(学芸出版社)の執筆、編集、出版があげられる。これは本研究での国内の調査及び試行錯誤のフィールドを海外のケーススタディ分析に展開したものである。調査研究のフィールドをいくつか具体的に列挙する。
イギリスのリバプールやグラスゴーのような荒廃した郊外に建築家やアーティストが介入することにより、地域文化・経済とクリエイティブが融合しながらエリアリノベーションが起こっている事例。デザインとマネジメントが結びつきながら新たな地域経済の活性化に寄与する方法論を目撃した。 アイルランドのダブリンなどでは、パブリックスペースに市民活動や表現がにじみ出すことにより、街の風景がドラスティックに変化していく現場を見た。一旦は衰退したが、新たなプレイヤー、デザイン、プロモーション、組織のチームアップ、マネジメントの導入などにより再生のきっかけを掴んでいる。それらの分析は、昨年度発見した概念である「エリアリノベーション」のプロセスや方法論をさらに強化する視点をもたらした。その成果をベースとした論文、講演活動、各地でのワークショップの開催などを通し研究成果を社会化していくことに努めるとともに、各方面からの反応、意見などを研究にフィードバックした。 山形、仙台などの地方都市においてエリアリノベーションの方法論を実際に変容した活動、デザインを行った。それらが地域の経済や市民意識に対してどのようなインパクト・影響を及ぼし、変化を促すきっかけになったのか。そのプロセスや様子をレポートし、研究へのフィードバックを行った。結果的に、複数の学会や雑誌などのメディア、地方自治体からの具体的な相談、オファーがあり、エリアリノベーションの方法論が社会的なニーズに呼応していることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2016年には、長野市、岡山市、尾道市などへの取材・研究をまとめた著書「エリアリノベーション/変換の構造とローカライズ」(学芸出版社)を出版。 また、2017年には、ドイツ、イタリア、イギリスなどへの取材・研究をまとめた著書「CREATIVE LOCAL/エリアリノベーション海外編」(学芸出版)を出版。
上記の取材や出版を通し、本研究の成果を社会に対して提示した。同時に、そのプロセスの中で新たな課題を発見した。今後その新たな課題を掘り下げてこととする。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究プロセスの中で新たな概念、キーワードが発見された。エリアリノベーションが起こっている都市に共通した空間デザインの新しい潮流とそのつくられ方、それを「工作的建築」と言う言葉で定義した。また、新たな変化のトリガーとなっているのは恒常的な建築よりも、暫定的/テンポラリーな使い方であった。そして、それがエリアに定着していく状況が多数確認された。このプロセスを方法論にまで昇華させたい。 またイギリス・ドイツの取材において、地域の変化を公民連携の組織や運営体によって実現しているケースを確認した。その組織と関係性のデザインがエリアリノベーションの継続に大きな役割を担っている。それらについて研究を深めるものとする。
【工作的建築/工作的都市】不確定な要素、外的要因のパラメーターが増大した現代において、計画が計画通りに遂行できない状況がやってきている。計画的建築、計画的都市が困難な時代に置いて、状況に柔軟に、その空間を使う人々が空間の生成にコミットしながら進むプロジェクト、立ち現れる建築を工作的建築と仮定し、そのあり方を追求する。 【テンポラリーユース】社会実験的に仮設的な建築、空間をまず出現させ、その存在の有効性を検討しながら定着させていくという手法。 【公民連携の組織デザイン】行政と民間が連携しながらプロジェクトを進めていくための関係性、組織のデザイン。特に公共性の高いプロジェクトの遂行においては、この組織デザインがポイントになることがわかってきた。そのあり方について研究するものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、計画通り調査を行うとともに、書籍出版の成果を残すことができた。 また、取材・研究成果を社会に提示し、実際のフィールドでテンポラリー/仮設的で工作的な実験を行うこともできた。 今回得られた研究結果と仮説を元に、さらなる国内外の調査や発表の場を模索する必要があると考え、次年度で使用するとした。
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