最終年度は前2年度のまとめと今後の課題の考察を行った。 本研究では、ある地域において、建築・都市空間のリノベーションや用途変更による活性化が同時並行して生じたことで、その地域が連鎖的・多面的な活性化をみせる状況を「エリア・リノベーション」と定義し、国内外の先進事例を比較・分析することにより、遊休資産を活用したまちづくりの新しい編成法を提示することを目的とした。 国内事例の調査・分析より、個人の自発的・ゲリラ的な活動から起こることの多いエリア・リノベーションの初期段階においては、不動産・建築・グラフィックデザイン・メディアを担う人材が必ず存在し、そのチームが活動を牽引していることが分かった。また、空間を形成するプロセスが、計画者主導から利用者主導に変化しているほか、活動の主導者や主要な関係者が、プロセスの全体に当事者として関わっている傾向があった。 他方、海外事例では、活動の契機こそ住民や民間企業がはじめた事象であるが、いずれも行政や国が追認する形で法律や制度と整合しているほか、プロジェクトのマネジメントとファイナンスを戦略的に行っている。プロジェクトを実行・経営する組織を整え、公民連携の形態を整えることで持続性を担保しており、それによって実験的なエリア・リノベーションが社会に定着し、手法として一般化していることが分かった。 研究成果である3冊の書籍において、エリア・リノベーションの概念を提示し、個人や民間がどうすればこれを起こせるのかという初動期の分析と、そのモデルを示した。この書籍を通じて、種々の同様の動向が「エリア・リノベーション」という言葉で明確化された結果、新聞やTVの報道においても、この言葉とともに各地の事例が紹介され、また公募事業名に用いる自治体も出てきた。「エリア・リノベーション」は一般社会での認知が進み、各地で様々な取り組みがはじまり、社会実装されつつある。
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