研究実績の概要 |
1970年代末から建設省、日本住宅公団などが研究開発したKEP(Kodan Experimental housing Project)における可変性の有用性を検証することを研究目的として、1982年以来、35年超にわたって住み続けられている集合住宅団地を対象として、専有部のインフィルの改修履歴を時系列的に調査分析した。改修履歴の変遷について1983年、1995年、2005年、2014年の調査結果を踏まえ、2017年末から2018年初めに行ったアンケートおよびヒアリング調査の結果、および管理組合に提出された「住宅模様替え願」を加味して、住まい方の変化、インフィル改修の時期、間取りの変遷などの改修履歴や住みこなしについて分析を行った。中層棟の専有部においては、可動間仕切り、可動収納ユニットが備わっているA,Bタイプでは、それらが配備されていなかったCタイプと比較して、間取り変更が多く実施されていた。建築的な可変性が、家族構成、ライフスタイルの変化への対応を容易にしていた。1982年当初から住んでいるある居住者は、可動間仕切り、可動収納壁があり、将来、対応しやすいということは魅力であり、購入の動機となった。結果的には可動収納壁を動かさなかったが、動かすことができるということは、家族にとって心理的に助けになったと述べており、間取り変更を行わずとも可変性が備わっていることには、大きな意味があることが確認できた。 共用部の大規模修繕工事は1992年、2002、2014年に3回、計画的に実施されている。エレベーターを有しない4階建ての階段室型住宅であること、外壁は塗装仕上げであることなどが奏功し、比較的安価に実施されていた。その結果、修繕積立金が安価であり、若い居住者が中古で購入するインセンティブになり、居住世帯の若返りに寄与していることが分かった。
|