研究課題/領域番号 |
16K06665
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
仲 綾子 東洋大学, ライフデザイン学部, 准教授 (70747609)
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研究分担者 |
谷口 新 大妻女子大学, 社会情報学部, 准教授 (40445185)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 授乳 / おむつ替え / 建築計画指針 / ベビー休憩室 / 商業施設 / 公共施設 / 医療施設 |
研究実績の概要 |
本研究は、公共、商業、医療施設における授乳およびおむつ替えを行う環境(以下、ベビー休憩室等と呼ぶ)の建築計画指針を提示することを目的とし、その結果を学術論文として発表するとともに、国の協議会等にて提示する等、広く社会に貢献することを目指すものである。このような目的のもと、今年度は以下の研究を行った。 1. 公共施設:科学館におけるベビー休憩室等の利用者およびスタッフを対象とした調査データの分析を行い、研究計画に示されている協力企業のメンバーとともに3編の口頭発表を行った。利用者側だけでなく運営側の視点を加え、多角的に検討する意義は大きいと考える。 2. 商業施設:東京近郊の商業施設を対象としてベビー休憩室等の整備実態調査を行い、面積等を分析した。その結果は平成29年9月に口頭発表を行う予定である。また、全国のベビー休憩室等の整備実態を予備調査として概観し、かつ地方の整備実態報告等を勘案した結果、日本国内よりも海外の事例を把握する方が今後のベビー休憩室等のあり方を考えるうえで重要な示唆を与えると判断し、その端緒として、アジアにおいてユニバーサルデザイン等の先進的な試みを積極的に進める国として知られるシンガポールにおいて整備実態調査を行った。 3. 医療施設:医療施設の授乳サロンの意義や利用実態を把握すべく、インタビュー項目の検討、日程調整等の準備を行った。医療施設を対象とした調査は平成29年度に実施する計画であるが、今年度中に対象施設と詳細な内容について協議できており、来年度早々に調査が実現する見通しである。 学会発表に加え、研究代表者が委員を務める国土交通省の「女性が輝く社会づくりにつながるトイレ等の環境整備・利用のあり方に関する協議会」において、上記2の分析結果を反映させた提言を行った。その結果は報告書として平成29年4月に公表される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を進めるうえで、以下の軌道修正を行っており、項目によっては当初の計画以上に進展しているものもあるが、遅れているものもある。しかし全体としてみれば、おおむね順調に進展しているといえる。 第一の修正点は、計画当初は日本全国のベビー休憩室等の整備実態を把握する予定であったが、前述の9.研究実績の概要で述べたように、日本全国よりも海外の事例を把握する方が有効と判断し、海外調査に着手したことである。したがって、当初予定していた日本全国の調査の実績はないが、海外調査の端緒としてシンガポールの公共施設2施設、商業施設3施設、医療施設1施設の整備実態調査を行うとともに政府機関の局長はじめ関連する担当者にインタビューできたことは、大きな進展があったと考える。 第二の修正点は、計画当初は学術論文を中心に発表することを想定し、かつ、広く社会に発信するために国の協議会等で提言を行うこととしていたが、図書(本)の出版は視野に入れていなかった。しかし、社会への影響力を鑑みるに本として出版することには大きな意義があると考え、研究成果をわかりやすく解説した本の出版を計画し、執筆を行っている。この点は当初計画していなかったものであるが、研究成果を社会・国民に発信する方法について具体的に実践しているという点で進展があったと考える。 第三の修正点は、研究当初は授乳およびおむつ替えを行う環境のみを対象としていたが、研究を進めるなかで、これらに関連するエリア(休憩、待合、あそび、共有空間等)を含めて総合的に検討する必要性が生じ、研究計画を再検討した。今年度の進展としては大きくはないが、全体として研究成果の社会的意義の向上に寄与すると考える。 修正点は以上の三点であるが、計画当初、平成29年度に行う予定の医療施設における調査の準備を平成28年度中に行う等、可能な限り迅速に研究を進めるよう取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更点として、上記11.で述べた3点の修正点、すなわち、①海外調査、②書籍の出版、③関連エリアがあり、以下のように研究を推進する方針である。 ①海外調査:平成29年度に北米(カナダまたはアメリカ)の公共、商業、医療施設調査を実施する。平成30年度には欧州(国は未定)を調査予定。海外調査は施設の調査許可を得ることが日本国内と比較して難しく、現地コーディネータの存在が調査の成否に大きく影響する。現在、平成29年度にカナダで実施予定の調査に向けて、現地をよく知る研究者と連絡調整を行っているところである。平成30年度に予定している欧州での調査については、平成29年度の早い段階から、研究代表者によるこれまでの調査(スウェーデン、イギリス等)での経験と人脈を活用して、連携の可能性を模索していく予定である。 ②書籍の出版:平成29年度に出版予定。執筆にあたっては、研究体制において協力企業として位置づけられている乃村工藝社のメンバーと協働する。なお、国際化を鑑み、本書は日英併記とする予定である。 ③関連エリアの検討:平成29年度にインタビュー調査を実施予定。平成30年度に調査データを分析し、論文または書籍として公表する予定。調査に際しては、当初の「授乳およびおむつ替えを行う環境」と比較して、プライバシーのレベルも低く、大きな問題点はないものと思われる。 研究計画に変更がない点については、当初の予定どおり、平成29年度に公共施設を重点的に、平成30年度に医療施設を重点的に進める。状況に応じてさらに研究計画に変更が生じる場合には、常に全体像を見直し、計画的に遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本全国におけるベビー休憩室等の整備実態調査を実施予定であったが、研究実績の概要で述べたとおり、日本全国よりも海外事例の整備実態を把握することが有効であると判断し、計画を変更した。この計画変更に伴い、次年度使用額として31,766円発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の研究の推進方策で述べたように、平成29年度に北米、平成30年度には欧州にて現地調査を行う予定であり、これに関連して適切に使用する予定である。
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