研究課題/領域番号 |
16K06666
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山中 新太郎 日本大学, 理工学部, 准教授 (30459862)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 防災集団移転 / コミュニティ / 漁村集落 / 付き合い |
研究実績の概要 |
東日本大震災で被災した漁村集落では、被災地の近くの高台に集落ごとに移転する防災集団移転が多く実施された。その結果、小規模な団地が数多く分散する結果となり、地域コミュニティの持続性に課題を抱えている。本研究では、石巻市雄勝町名振地区を対象に、震災前から現在に至るまでの居住地の変遷や移転先での生活の定着具合、近隣コミュニティの継続具合をヒアリングや実地検証から明らかにすることを目指している。 名振地区の住民は震災前には4つの地縁的な小集団(講)に分かれていた。震災直後は被災者の多くは1箇所の避難所で集まって生活し、その後、地区内の2つの仮設住宅に居住していた。高台移転地は津波の被害を免れ災害危険区域に指定されなかった既存住宅に隣接して2箇所造成された。本研究では、平成28年度に高台移転をした20被災世帯中16世帯、38名を対象に3回の調査を実施した。ここでは、漁業の手伝いなどの生業に関する付き合い、寄合や冠婚葬祭、祭礼など、講に関する付き合い、おかずのやり取りやお茶っこなどの個人間の付き合い、消防団や老人会などその他の付き合いについて、震災前、仮設時、現在の3つの時制について、各々の付き合いの範囲を聴取した。この調査は、被災を免れた14世帯中10世帯18人に対しても行った。これによって、被災し高台に移転した世帯と被災を免れた世帯の近隣関係について比較が可能なデータを得られた。平成29年には、雄勝町の16地区の防集団地について宅地選定方法や宅地、公営住宅入居者への公営住宅への評価などについて、114世帯(2017年8月時点までに防集団地へ転居している121世帯の94.2%)に対してヒアリングを行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度 (1)調査の実施内容 名振地区のヒアリング調査を3回実施(第1回:平成28年5月(21世帯)、第2回:同年7月(31世帯50名)、第3回:同年9月(24世帯40名))。それぞれ、主に公営住宅や高台移転地への住みやすさや景観などの評価、震災前の付き合い、仮設住宅時と現在の付き合いを聴取した。また、雄勝町の16地区の防集団地に2017年8月までに転居した世帯を対象に、(第1回:平成28年5月15世帯(名振地区)、第2回:平成28年7月4世帯(名振地区)、第3回:平成28年10月35世帯、第4回:平成29年5月22世帯、第5回:平成29年8月38世帯の合計114世帯(自力再建住宅42世帯、災害公営住宅72世帯)に対して実施した。 (2)研究の進捗 平成28年度に「研究課題1.震災前から仮設受託までの居住地や居住形態の変遷の把握」については、名振地区の調査対象全ての世帯の居住地変遷を把握できた。「研究課題2.高台移転後の居住地や居住形態の把握」については、震災前、仮設住宅時、現在の3つの時制について、付き合いの相手と内容をヒアリングした。平成29年度には上記の調査資料をデータベース化した。さらに世帯属性や移転パターンごとに付き合いの変化を分析し、「宮城県石巻市雄勝町名振地区における居住地移転の実態と近隣付き合いの変化」(藤本陽介、山中新太郎他、2017年度日本建築学会大会口頭発表)として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、昨年度に実施できなかった「公営住宅住みこなし調査」について対象を拡大して実施する予定である。対象は当初から計画されている名振地区の17戸に水浜地区11戸を加えた28戸である。すでに所管の雄勝総合支所とは調査へ向けた打ち合わせを始めており、6月中に調査概要書を作成し、7月上旬に支所及び地区長の了解を取り付け、7月末から8月にかけて現地で各戸を訪問し、ヒアリング調査と家具配置などのレイアウト調査を行う予定である。また、雄勝町から約200世帯が移住する予定の隣接する河北総合支所管内の二子団地が8月には完成引渡しがされる予定であり、地元に残った被災者の住宅再建を対象とした本研究の成果と比較する意味で、二子団地に対する関係者へのヒアリングや次年度以降に向けた同様の調査実施へ向けた準備を行なっていきたい。9月以降は成果の取りまとめを行い、日本建築学会計画系論文集等へ投稿をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に予定していた名振地区を対象とした「住みこなし調査」が調査先都合で実施できず、次年度使用が生じた。平成30年度には名振地区の17戸に水浜地区11戸を加えた28戸を対象に、7月上旬に支所及び地区長の了解を取り付け、7月末から8月にかけて現地で各戸を訪問し、ヒアリング調査と家具配置などのレイアウト調査を行う予定である。当該調査及びその準備のための打ち合わせ等の出張のための旅費として使用する予定である。
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