本研究の目的は「日本版土地適性評価手法」の技術研究において、評価に用いる理論式等の妥当性を検証することとした。「日本版」という語を付したのは、先行する韓国の手法に対して、日本の地方都市が抱える都市政策上の課題に適した手法を開発することを明確にするためである。 最終年度の研究成果は、「公共交通によるアクセシビリティ指標」(日本版手法のコアになる指標で、韓国にはない)に関する演算方法について、内外の既往研究等で用いられた指標類のほぼ全てをレビューした上で、都市行政の政策立案及びPDCAに用いる場合における一般市民に対するアカウンタビリティの実用性も観点に入れて、日本の政策適用に最適な演算方法を特定するとともに、改良したプログラムを用いて、人口規模がほぼ同一(約20万人)で都市構造の特性が異なる4都市をサンプルにして、各都市の持つ活動利便性の性能(現状及び潜在能力)の評価に有用であることを示すところまで到達したことである。2018年12月にはこの成果を審査付き学会論文にまとめて投稿(現時点で2次審査中)した。 また、研究に用いる演算プログラムについては、土地利用関係の演算は10mメッシュサイズを基調とする必要から演算速度の高速化が研究期間通じての課題であったが、最終年度にプログラムの改良にほぼ目途がつき、人口40万人程度の規模までは概ね扱えるところまで到達した。 なお、研究目的との関係では副次的成果となるが、上記「公共交通によるアクセシビリティ指標」は、現在日本政府が国土・都市政策に掲げる「コンパクト+ネットワーク型の都市構造」の政策評価に実用可能な数値指標である。現時点では公共交通のネットワーク及び運行頻度のデータ作成が個々の都市ごとに必要となるが、演算プログラムは公表できる段階に達しているので、この成果が現実の行政施策にも寄与できることを期待している。
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