研究課題/領域番号 |
16K06674
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山口 健太郎 近畿大学, 建築学部, 教授 (60445046)
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研究分担者 |
三浦 研 京都大学, 工学研究科, 教授 (70311743)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 介護職員 / 腰痛予防 / トイレ / 空間寸法 / 特別養護老人ホーム |
研究実績の概要 |
本研究では腰痛予防の観点から高齢者入居施設で勤務する介護職員の身体負担の軽減について検討を行っている。研究1年目(2016年度)は、特別養護老人ホーム2施設の介護職員に対する行動観察調査を行い、身体負担の高い行為の抽出を行った。その結果、居室内の移乗介助や、トイレ内での移乗を含む排泄介助、浴室内での入浴介助の身体負担が高かった。 そこで研究2年目(2017年度)は、トイレ内における移乗介助動作を取り上げ、排泄介助に適したトイレの空間寸法について明らかにすることを目的とした。実験方法は、ビデオカメラを用いた仮想のトイレ空間内での動作測定である。仮想トイレは大学内に設置し、側方2か所、上方1か所からの撮影を行った。被験者は高齢者施設に勤務する介護職員10名であり、高齢者役は高齢者体験キットを装着した学生が担った。実験は壁などを設けない自由空間内と、可変の壁を用いた空間内にて行った。可変の壁は10㎝ずつ狭くしていき、介助が出来ない限界値と、介助時に壁に体があたる値(空間の広さが介助姿勢に影響をあたえる値)について把握した。実験対象としたのは居室内トイレであり、トイレに入る動作から、移乗、着脱、退出までの一連の動作を想定した。さらに、扉の開口幅が介助の行いやすいさに影響を与えることから開口幅についても検討を行った。 速報値を列挙すると、1人介助かつ便器に対して車いすを直角に設置する場合に必要なトイレの横幅は1100㎜以上であり、1000㎜以上の開口幅があると横幅に関係なく、トイレ内の出入りが可能となっていた。2人介助かつ便器に対して車いすを直角に設置する場合のトイレの横幅は、1100㎜以上であり、便器から長手方向の壁までの距離は700㎜以上となった。トイレの開口幅については、1000㎜以上となればどのようなトイレ寸法でもトイレ内への出入りが行えていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画では、2016年度から2017年度前半にかけて特別養護老人ホームに勤務する介護職員の行動観察調査を行い、介護の身体負担が高い行為の抽出を行う予定であった。介護職員の行動観察調査については、2016年度中に終えることができ、予定よりも早い進捗状況で進んでいる。2017年度については、行動観察調査から抽出された身体負担度が高い行為について、空間の側面から改善策を検討した。 2017年度は上記に記載した通り、居室内トイレにおける排せつ介助動作に着目し、介助を行いやすい空間寸法についての実験を行った。実験は2017年12月から2018年1月にかけて実施し、有用なデータの抽出を行うことができた。現在は、これらのデータの分析を行っている段階である。2018年度は当初の予定にもあった浴室、居室内における介助動作に着目し、介護職員の身体負担が少ない空間寸法について明らかにしていくとともに、これらのデータをまとめる予定である。 以上のことから、当初の計画通り概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね順調に進んでいる。2018年度は、2017年度に実施したトイレ内での介助動作に関する実験と同等の実験を浴室内、居室内にて行う予定である。浴室に関しては、主に脱衣室を対象に実験を行う。浴室に関しては浴槽の機種により空間寸法が異なることから、定型的なデータを抽出する事が難しい。一方、脱衣室に関しては、福祉機器による差が少なく、また、濡れている状態の介護は大きな身体的負担となることから留意が必要である。そこで、本研究では、脱衣室内における移乗介助・着脱動作に必要な空間寸法について明らかにする。また、居室内ではベッドから車いすへの移乗介助時に介護職員の身体負担が高くなる。そこで、片側介助(1人介助)、両側介助(2人介助)時に必要な空間寸法について明らかにしていくことを目的としている。 また、本年度は研究の最終年度にあたるため、実験データの取りまとめに注力したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由 当初の計画では、学外の施設に赴き実験を行う予定であったが、実験空間の設営の問題が生じたため大学内にて実験を行った。その分、旅費の費用が抑えられたことから、残額が発生することとなった。一方、調査協力者、調査補助員の謝礼、賃金については当初より費用が増大しており、旅費の減額との相殺により503,014円の残額が発生している。 使用計画 2018年度は研究最終年度にあたるため、上半期から計画的に実験を行っていく予定である。さらに、研究論文への投稿を行っていきたいと考えていることから投稿料も必要となってくる。また、先進事例の収集なども考えており、費用面も踏まえて計画的に取り組んでいきたい。
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