本研究では、空間、福祉用具、介護技術の観点から高齢者入居施設における介護職員の腰痛予防について検討を行った。具体的な研究目的は下記の3点である。1、介助時の身体負担度の把握、2、身体負担度と空間、福祉用具、介護技術の関係性についての検討、3、介護職員の身体負担を軽減する空間、福祉用具、介護技術の検討である。 最終年度は、上記の研究目的3に相当する高齢者入居施設のベッドまわりに必要な介助寸法について検討した。対象とした介助動作は排泄介助、体位交換、清拭介助、移乗介助(後ろ支え介助、前抱え介助、2人介助、リフト介助)であり、実験は高齢者施設2施設の地域交流スぺ―スに作成した実験空間にて行った。介助動作は4方向からビデオ撮影を行い、得られた動画データを用いて最大動作寸法を抽出した。被験者数は23人である。 実験の結果、移乗を除くベッドまわりに必要な寸法はベッドの中心から頭部側に1586㎜、脚部側に1614㎜、ベッドが接している壁から2924㎜(ベッドは壁に垂直設置)となった。移乗介助に必要な寸法は頭部側1510㎜、脚部側1545㎜、ベッド長辺方向の壁から2361㎜となった。さらに床走行リフトを用いた場合は頭部側1603㎜、脚部側2007㎜、ベッド長辺方向の壁から2687㎜となった。 3年間の成果をまとめると、OWASを用いた身体負担度の計測よりベッドまわりにて身体負担度が高い動作は福祉用具を用いない移乗介助であった。その一方、床走行リフトを用いることにより身体負担が軽減されていた。次に、移乗介助動作と居室内トイレの関係性についての検討を行い、居室内トイレの寸法は、福祉用具を用いない場合には間口1500㎜×奥行1400㎜の広さが必要であり、床走行リフトを用いる場合には、間口1550㎜以上が必要であることが明らかとなった。また、ベッドまわりの寸法については上記の通りである。
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