研究課題/領域番号 |
16K06675
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
加嶋 章博 摂南大学, 理工学部, 教授 (80390144)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スペイン / 植民都市 / インディアス古文書館 / グアテマラ / 軍事技師 / 都市図 / 都市の輪郭 / 近世都市 |
研究実績の概要 |
スペイン植民統治地時代に関するアーカイブであるスペイン国立インディアス古文書館では、旧植民地をエリア別のセクションに分け、計7000を越える都市図等を保存しており、主としてこうした視覚的資料(イメージ資料)と都市建設に関わる文書(テクスト資料)を頼りに、本年度はこれまで取り組んで来た都市計画要素の抽出作業(都市図カルテの作成)をグアテマラ・セクションを中心に進めた。さらに都市計画にどの様な技術が投入されたかを物語るテクスト資料の選定と具体的計画作業の抽出(都市計画技術のデータベース化)を行った。 蓄積した都市図カルテの中から、とくに1774年、1775年のグアテマラの都市建設に関わるイメージ資料に着目し、都市計画行為として認識できる要素を分析した。地理条件の認識、都市の輪郭(境界線)、宗教施設等の配置に関する作図の分析から、都市の基準点、都市の輪郭を決定する情報が推察された。さらに計画変更を示すスペインの軍事技師による都市図を比較分析し、都市の輪郭決定において、地理的条件を確認しながらも、幾何学的な秩序を重視した痕跡を確認することができた。これらより都市計画における当時の優先的要素を示す有力な情報を得ることができ、下記の査読論文にまとめ、国際都市計画史学会で発表した。 Akihiro Kashima(2016):Determining factors for the urban form and its orientation in Spanish colonial town planning:Planning the town of Guatemala in the eighteenth century”, HISTORY URBANISM RESILIENCE, VOLUME 01, pp.235-243.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スペイン植民地時代の都市計画の実践事例の分析から、「都市計画」に準じる行為としてどのような技術や検討作業が必要であったのか、残された都市図や関連文書から分析事例を増やして検討を進めている。16世~17世紀の関連資料の分析から、当時の「都市計画」には、広場の計画、道路の配置計画、主要な施設の配置、小広場の分散配置などの近代以降の都市計画理念に関連する視点を確認している。さらに、都市の拡張を前提にした都市計画の必要性をそうした事例に確認できることから、近代的な都市計画の視点との連続性が個々の事例から見えてきた。 また、18世紀のグアテマラの都市建設に関わる資料より、都市の計画段階の決定プロセスとして、都市の配置、輪郭の設定などの都市レイアウトの検討でどのような要素を優先したのかについて、都市図の事例分析から手がかりを得ることができた。 さらに並行して、こうした植民都市を計画し、都市図を描いた技師が、スペインで教育を受けた軍事技師である場合が多く、彼らがどのような教育を受けてきたのかを検討する情報が蓄積されてきた。
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき、スペイン植民地時代の「都市計画」行為を示す都市計画図や都市整備図などのイメージ資料やその具体的な行為を物語る文書や関連する法制度史料の事例分析を増やし、考察を重ねる必要がある。特に2016年度に考察した都市計画の初期段階における決定プロセスなど、計画変更を示す資料にも注意し、「都市計画」がどのような行為であったのかを説明できる要素をそうした資料から抽出していく。 今後、インディアス古文書館のサント・ドミンゴ・セクションから都市図や都市整備計画図等のイメージ資料やテクスト史料ならびに関連する法規範や制度や記録文書を活用し、「都市計画」的行為とみなせる要素を検討する。主要広場と均質なレイアウトパターンに集約されるスペイン植民地の都市イメージの中に、どのような多様な計画思想が存在したのかを分析しながら、近代都市計画との共通性と差異についての考察を行う。 あわせて近世以降の本国の都市整備や都市形成過程にも目を向け、同時代の都市計画行為の前提となる都市の形成・拡張過程に関連する情報や先行研究を整理する。
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