研究実績の概要 |
日常的な身体活動量の確保は生活習慣病などのリスク軽減に効果的であることは既に知られているが, 適度な身体活動量を維持するための条件として, 近隣環境のWalk-Ability が注目されている.本研究は, 身体活動量の観点から近隣環境のWalk-Ability を評価し, その改善手法を提案することを目的としている.具体的には(1) Walk-Ability-Index による近隣環境評価手法の開発, (2) 近隣環境評価のケーススタディー, (3) 近隣環境と近隣居住者の身体活動量との関係把握, (4) 近隣環境改善手法の提案, の4項目について研究を行う.最終的には近隣環境のWalk-Ability の高さが身体活動量を増加させる効果を検証し, 近隣環境改善策実施のプロセスを示すことが目的である. 本年度は,(1)については福岡市と長崎市のGISデータを利用して,近隣環境のWalk-Abilityを総合的に評価する方法についての検討を行い,実際に地図を作成した.ここでは,建物利用や,街路ネットワーク,駅やバス停からの距離など,様々な指標を統合的に評価する方法を開発した.また,この地図を用いて(3)における近隣居住者の身体活動量を把握するためのアンケートを福岡市内と長崎市内で実施した.このアンケートは,近隣環境と身体活動の関係を把握するためのもので,一日あたりの平均的な運動量を計測するためのものである.(2)については,歩き易い都市環境づくりを実践していることで有名なヨーロッパの諸都市と,日本の諸都市の中心市街地のWalk-Abilityの評価を行うための基礎調査を行った.これらの調査成果に基づいて,オープンスペースや地形,街路ネットワーク,建物用途,建物高さ,公共交通機関との接続,などの詳細な情報を総合的に評価しながら,(1)よりもさらに小さなスケールでWalk-Abilityを評価するための,解析手法について検討を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下のように研究をすすめる. (1) Walk-Ability-Index による近隣環境評価手法の開発,と,(2) 近隣環境評価のケーススタディー, においては,(2)のアンケート結果の収集を行い,(1)との相関を把握するための分析をすすめる.また,アンケートのサンプル数を増やすために,さらなる追加アンケートを福岡,長崎,や他の県で実施する予定である.(3) 近隣環境と近隣居住者の身体活動量との関係把握,については,今年度調査を行った,ドイツのフライブルク,ヴォーバン,ミュンヘン,シュトゥットガルト,スイスのバーゼル,チューリッヒ,オーストリアのウィーン,ザルツブルク,などを対象に,オープンスペースや地形,街路ネットワーク,建物用途,建物高さ,公共交通機関との接続などの詳細な情報を用いながら,(1)よりもさらに小さなスケールでWalk-Abilityを評価するための,解析手法を開発する.また,日本の諸都市とヨーロッパの諸都市とを比較し,それぞれの特徴を把握した上で,近隣環境改善手法の提案を行っていく.
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