本研究はわが国の空き家解体除却事業と跡地利用がどのように取り組まれているかを調査し,空き家の解体除却事業と跡地整備の総合的な整備施策に資する基礎的知見を得ることを目的としている。今年度は主に所有者等による空き家の解体除却に対してその費用の一部を自治体が補助する自治体補助型の解体除却事業を主な調査対象とし,呉市危険建物除却促進事業と高崎市解体助成金制度を対象に調査を行った。 呉市危険建物除却促進事業では2011年度から2017年度に合計587件の空き家が解体されており,この内,中心市街地を構成する4地区の2017年度事業分の跡地の現地調査を行った。2011年度から2016年度事業分の跡地調査と同様に,立地条件が良い跡地は住宅や駐車場などの利用もあるが,狭隘道路など立地条件が恵まれていない跡地は,未利用で更地のままの敷地が多いことを確認した。また,呉市以外の自治体補助型の事業として高崎市の高崎市解体助成金制度を対象に調査した。当該事業では,2014年度から2017年度の4年間で合計563件の空き家が解体除却されている。補助金額の上限は100万円と高く,高崎市では解体後の跡地が活用されていない場合は税制上の支援措置も用意されている。自治体担当者のヒアリング調査によれば,高崎市は平地部の空き家解体の事例が殆どで,斜面地などの立地上の悪条件により跡地利用が進まない跡地問題は殆ど発生していないとのことであった。空き家の解体除却整備は自治体主体型(長崎市)と自治体補助型(呉市,高崎市)によりその成果に長短があるが,危険空き家の大量解体の促進という面では自治体補助型がより効果的である。しかしながら跡地活用に関しては空き家の立地条件によりその後の利用状況も大きく異なる。跡地利用が停滞している呉市では跡地の有効活用が検討はされているが,解体除却と跡地利用が連動した施策立案には至っていない。
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