平成30年度では、スペインとイタリアでの現地調査による成果と前後して、中国での招待講演と、国際シンポジウムで庭園に関するテーマを手がけることになった。まず〔学会発表〕からみていくと、9月に日本建築学会大会で行われた下記の発表が挙げられる。この発表では、ブルネレスキが設計の手本とした地元中世のフィレンツェ洗礼堂について、建築本体のみならず、ドームの天井画に描かれたキボリウムに着目することで、トスカーナ地方の中世建築にはあまり類例がなかった円形平面のペンデンティヴ・ドームや帆形ドームの着想源を突き止めることができた。 次に前述の中国での招待講演については、イタリア・ルネサンスのヴィッラや庭園には古代ローマの復興と中世における断絶という特徴が見られるが、スペイン中世のイスラーム庭園に受け継がれたという仮説を提案した。また、地理的にも東アジアの離宮や別荘との共通点がうかがえることを示した。とりわけ中国には優れた庭園が多く残されていることもあり、今後国際共同研究を進めるきっかけをつくることができた。 また、もうひとつの国際共同研究として、古今東西の庭園に関するシンポジウムで、イタリア・ルネサンスの庭園について発表した。このときには15世紀のフィラレーテ『建築論』に掲載された庭園をそなえた建築とその用語を分析することによって、娯楽性が重視された庭園と実用的な庭園とをフィラレーテが使い分けていたことと、16世紀以降の庭園に大きな影響を与えたことが明らかになった。
|