本研究により、スペイン統治下(1450~1550年)のナポリやパレルモを中心とした南イタリアの建築の様式変遷については、15世紀には主にフィレンツェの影響、16世紀には主にローマの影響といった従来の説に加え、イスラームやゴシックの伝統が残存するスペイン王国(ないしはアラゴン王国)の様式変遷との類似性も見られることが示された。ただし、スペインとともに大航海時代の主役として競い合っていたポルトガルとの関係については今後の課題としたい。というのも、15世紀末のスペインとポルトガルの建築様式にはいずれも二次元的な装飾過多という特徴が見られるからである。
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