まず川崎市立日本民家園における耐震事業に関し、旧三澤家住宅耐震工事報告書の総括と執筆を行った。日本を代表する民家野外博物館川崎市立日本民家園の耐震事業は、今後全国の文化財級民家の耐震事業に対して影響力が大きいため、編集は、文化財としての民家保存継承の原則と、公開活用施設の安全性能の問題の双方に留意した。第1章概説の執筆を担当し、川崎市立日本民家園における開園以来の歴史的建造物保存の基本方針、公開建物への安全性確保の問題が火災から耐震へ拡大してきた経緯、その中で旧三澤家住宅の耐震事業が長期にわたった意味を記した。また、構法・構造の専門家による項目もできるだけその検討経緯がわかるように編集し、検討過程の要約も掲載した。さらに耐震事業の意義を来園者に伝える広報活動実績も伝えた。 群馬県島村の蚕種製造民家群の継承は、2017年夏に日本建築学会関東支部として保存活用要望書を提出した田島亀夫氏宅の蚕室に関する点検を継続し、登録文化財化に向けた資料整備を行った。また、全国重要文化財所有者連盟総会の基調講演を頼まれたので島村の建築群の存続価値とその方向性について強調した。 横浜市保土ヶ谷区に所在する茅葺き民家(津久井郡から昭和35-37年に移築)のボランティア修理が2019年8月に終了した。この家は2001年から関わっており調査も行っていたので、今回の活動記録を整理した際に過去の調査資料も再整理した。 横須賀市の万代会館は、万代会館保存活用推進協議会の活動のなかで2018年度に提言書を横須賀市へ提出した。横須賀市はその内容を真摯に受け止めてくれて、まずは文化財的価値を認めた存続手法の検討に着手し、2019年に万代会館は横須賀市文化財に指定された。 5点目は以上の活動内容の中で、報告書を別途作成中のものを除いて、活動成果報告書を取りまとめた。その内容に関しては研究総括報告に概要を記した。
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