研究課題/領域番号 |
16K06686
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
清水 重敦 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 教授 (40321624)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 文化的景観 / 変化のメカニズム / 世界文化遺産 / 保存計画 |
研究実績の概要 |
3年目である2018年度は、未踏査であった国選定重要文化的景観または文化的景観選定計画地として、山形県大江町、長野市松代町を訪問し、文化的景観の価値付け、保存計画とその実践について、現地調査を行った。大江町では最上川との関連、生業との関連においてさらなる価値の掘り下げが可能であることを見出した。またこれまでの調査の継続として、葛飾区柴又、彦根市、京都府和束町等の宇治茶生産地の現地実測調査等を行い、文化的景観調査の方法論の随時の改良を試みている。世界文化遺産における文化的景観としての登録がなされている熊野古道の現地調査も行い、文化的景観の世界文化遺産登録に伴う長所、短所について認識を深めた。 これらの調査、あるいは外国人研究者による招へい講演の企画、イタリア・トリノ工科大学と行っている合同ワークショップ等を行う中で、文化的景観の価値とその保全とを一体として捉える視点として、「変化のメカニズム」に注目することの意義に気が付くこととなった。以降、この観点から文化的景観を読解することを進めている。現在のところ、これらの成果及び「変化のメカニズム」に関する新たな視点を、全国町並みゼミ全国大会におけるシンポジウム、建築家とのシンポジウム「Aプロジェクト 時間が呼び覚ます建築」、関西町並みゼミ発起大会における講演、アジア・ユネスコ文化遺産保存センターにおける文化遺産に関する国際研修等において世に問うことを重ねている。この考え方は近年の社会状況を反映した都市及び景観保全の現状によく合致することが確認され、今後、この観点からの地域読解を進め、論考にまとめていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では文化的景観に関して、価値評価と保全手法を一体としてとらえる際の視点・方法の開拓を最大の目的に据えている。日本各地の文化的景観の現地調査を重ねる中で、「変化のメカニズム」の解明が文化的景観独自の価値と保全を一体化する考え方の基盤となることに気づき、それが文化的景観に留まらずにより広く景観一般に応用可能であることへと考察が進みつつある。よって、研究はおおむね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
未踏査の重要文化的景観の調査を進める必要があり、次年度は北陸地方及び九州地方を重点的に調査する予定である。また研究によって見出された視点を肉付けすべく、学術講演の実施並びに学術論文の発表を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度予算額は使用したものの、前年度より繰り越した未使用額分が残額として残った。最終年度である次年度に集中して調査を実施することとし、未使用額を次年度に繰り越すこととする。
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