研究課題/領域番号 |
16K06692
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
二村 悟 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 研究員 (70520013)
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研究分担者 |
後藤 治 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (50317343)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 基準寸法 / 地域性 / 方位 / 立地環境 |
研究実績の概要 |
特に第二次世界大戦前に公的機関(主に農林省、農商務省を対象)が示した標準仕様が農業関係の施設にどのような影響を与えたのか、標準仕様に則って建てられた類似するものを文化財とするときに、どの部分を見れば差別化できる可能性があり、それを物件個別の特徴や価値として浮き彫りにできるかということを目的として本研究を進めている。初年度は予定では用途の違う複数の建物を調査し、並列的に分析を試みる予定であったが、昭和前期の稚蚕共同施設と農業倉庫を複数棟調べる方向とし、一定の新たな知見を得ることができた。まず、標準仕様では基準寸法は田舎間や尺貫法のきりのいい寸法で示され、計画ではこの点は特に注目していなかった。調査を進めると、畳のある稚蚕共同施設では京間、農業倉庫では田舎間が使用されていた。特に稚蚕共同施設は廊下は田舎間で、基準寸法が混在していた。この点が当地で標準的か否かを知るため、同時代の住宅2例の調査も実施した。当地で普段使用する畳に注目すれば、標準仕様でも地域性が謳える可能性があることが示唆された。この点は、これから更に検分する予定である。 稚蚕共同施設のように仕様が大雑把な例は、細かく検証することで違いが浮き立ってくることは想定していた。その中で農業倉庫の標準仕様で判明したことは、比較的仕様が細かく示される場合は庇や軒など細かな部位による選択肢が増加するため、立地環境と建物配置と方位との関係で、標準仕様の選択方法は多岐に渡ることになり、一定の違いが生じてくることがわかってきた。この点も引き続き進めて行く。 初年度の成果として、似たような外観を持つ建物同士を個別にどのように文化財として価値付け、評価していくかということを想定したときには、本研究による成果はその一助とすることができる重要な意義を示しつつあるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実測調査を伴う研究の性質上、初年度から分析を進めるというよりは、初年度は実測調査を進めて次年度以降に分析しやすくなるよう事例を蓄積していくことを想定していたので、特に基準寸法の用い方に関して一定の知見を得られたことは、計画以上に進展していると考えている。アポイントの問題も難しいことが想定されていたが、現地で調整をしてくれる協力者もおり、この点もスムーズに進んだことの大きな要因である。
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今後の研究の推進方策 |
まだ漁業関係の施設に取り組んでいないので、船倉の標準仕様は確認できていないが、数多く現存するので、このにも注目していきたいと考えている。また、農漁業施設の標準仕様は、すでに存在したものの事例の収集から整備されていったという背景があり、みかん小屋などはその過程の資料が確認できている。みかん小屋の類似するものが群で残る地域もあり、逆に文章化されていない標準仕様を浮き立たせて、その仕様に則っているということを普遍的な価値として謳えないかも検討している。これから研究報告も日本建築学会を中心に進めて行く予定である。
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備考 |
2016年8月10日「養蚕の歴史 未来へ紡ぐ 元飼育場西山田公会堂 専門家調査 価値を評価」愛媛新聞 掲載 2016年11月25日「八幡浜米倉庫 農業遺産として実測調査」八幡浜新聞 掲載
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